118話 異界へのゲート①

レドルジ、と言う名前は聞いたことがない。もしかすると72階層以降でフロアボスとして出現するやつなのか。それとももうそういう次元の話ではなくなっているのか。

どちらにせよ、真の黒幕が発覚した。狂信者の教祖レドルジ。コイツがこのくそったれなダンジョンを創ったらしい。ニフェルタリアが実在する世界なのに、何故ダンジョンは無限に挑め、同じ奴が何度も出てくるのかこれで説明がつくな。

となると、seek the crown の開発者である三上はその事を知っているのだろうか。


──いや、それよりもどうやってこんな物を創ったんだ? カイロスの力か……? 別の世界に行くことが目的なのに、わざわざそんな事を願う理由も見当たらない。


「そんな事はどうでもいい。まさかお前……このままトンズラこけるとでも思ってんのか? だとしたら、相当めでたいヤツだな」


聞くことは聞いた。これ以上は蛇足だろう。

俺が双剣を構えると、リリア達も再び武器を取り臨戦態勢にはいる。


「お前らは下がってていいぞ。そんなボロボロじゃかえって危険だ。──おい! アルベルトッ! チッ」


戦う気力なんてないと思っていたアルベルトだが、目の前にいるオシリスは妹の仇でもある。だがまさか、勝手に突っ込むとは予想外だ。

それに俺はエリクサーを飲んだが、アルベルトはメーデイアと戦いかなり消耗している状態のままだ。オシリス程度とはいえ、クラッド達3人を苦しめる程に強くなっている。アルベルト1人でどうこうなるとは思えない。


「お前達だけは許さねぇッ!!!!! ぶっ殺してやるッ!!!!!」


「何か私に恨みでもあるんですかねェ?」


跳躍し拳を振り上げるアルベルトだが、オシリスは焦る素振りもなく魔法陣を展開。

それが発動する前に、影化を使い一気に距離を縮めるが、背後に飛び出た瞬間、視界に映ったのは発動直前の魔法陣。


「甘いですよ」


「チッ! 生意気だな」


アルベルトの方と同時に、魔法陣からは大量の水が噴射。激流の如く押し寄せるそれに体の自由を奪われる。


──なるほど、確かに以前とは段違いだな。だが、所詮はこの程度。どうとでもなる。


反撃に移ろうとしたその時、オシリスは俺達に背を向け、


「ここで戦う気はないと、何度言ったら分かるのですかね。とは言ったものの……貴方から逃れるのは中々に難しい……少々卑怯な手を使わせて頂きますよ」


瞬時に巨大な魔法陣を複数展開。だが狙いは俺ではなく、負傷しているリリア達だ。


──くそったれがッ!


「きゃっ!」

「な、何するのじゃ!」


俺は躊躇うことなく救助向かう。リリアと ウルを抱え込み、


「クラッド! 男なら我慢しろよッ」


「えっ、ちょ……ぐっ! 扱いが酷いっすよ!」


両手に2人を抱えいる状態で、更にクラッドまで抱えるのはさすがに無理だ。アイツには悪いが、威神力で吹っ飛ばした。

直後、魔法陣からは無数の氷の槍が放たれ、クラッドの頬を掠めた。

横目で見るとアルベルトは、氷の槍の弾幕の中それでもオシリスに突っ込む気でいる。


オシリスは既にゲートの目の前。あと少し踏み込めばそのまま消えてしまうだろう。

2人を抱えいる状態でスキルを使ったとしても、さすがに間に合わない。

俺はイペタムをオシリスに、ケラノウスをアルベルトに向けて投擲。


「アルベルト!」


案の定、イペタムは魔法によって弾かれてしまう。


「では、私はこれにて……貴方々とのお遊びも、中々楽しめましたよ」


そう言ってゲートに1歩踏み込むが、


「なめんじゃ──ねぇぇえッ!」


アルベルトはケラノウスをオシリスに向け弾き、刃は右肩に深く突き刺さる。オシリスはそれを引き抜くと、


「~ッ! 随分必死ですね……! でも残念、時間切れです。あ、そうそう最後に1ついい事を教えてあげましょう。私がゲートをくぐればダンジョンは崩壊します。クク……追いかけてくるも崩壊を待つも自由です。それでは、もう二度と会わないことを祈りますよ」


「まてッ! 待てよこの野郎ッ!」


アルベルトの悲痛な叫びには気にもとめず、オシリスはそのままゲートに消えていってしまった。



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