12話 王の資質
【フロアボス:ゴブリンジェネラルLv3】
ゴブリンジェネラルは思った以上にデカイ。身の丈は3メートルを超えるだろう。
今までの雑魚ゴブリンとは違い、上等なものでは無いがしっかりと鎧などを装備している。
それに生意気に兜なんてのも被ってやがる。
だがLv3じゃ見掛け倒しもいい所だ。
あのナタだけはくらう訳には行かないが、コイツの打撃程度なら問題なさそうだ。
ジェネラルは攻撃力に特化したモンスターだが、その分動きはそこまで早い訳じゃない。
雄叫びを上げ、こちらへと向かってくる。
1歩踏み込む度に、ボス部屋全体が揺れているような感覚を覚える。
ナタで斬りこんでくるかと思ったが、左腕を伸ばしラリアットの形で迫る。
「――ばかか。そんなもの当たる訳がないだろ」
身長差は歴然。だがそれが逆にラリアットを無駄にすることになる。
ラリアットが当たる寸前、腕をくぐるよう前宙でそれを回避。
腕と俺が交差した時、剣を振り抜きカウンターが成立。着地と同時に距離をとる。
赤黒い血液が飛散し、怒り狂うジェネラル。
「どうした、そんなもんか。お前、将軍なんだろ?」
開始早々ジェネラルは、腕を負傷した。
ジェネラルは瞬時に距離を詰めナタを引き摺りながら迫る。
コイツの馬鹿げた筋肉のせいか、引き摺られた地面は抉れ、小石が散乱する。
そのまま至近距離で、ナタを振り上げ半月を描くような弧の軌道。
しかしそんな見え見えの攻撃が当たる訳もなく、半歩下がることで切っ先は顎先をギリギリの空を切る。
振り上げた勢いで、そのまま後方の地面へとナタがめり込んだ。
その一瞬の隙をつき、鎧の隙間を縫うように左腕の関節を斬り込む。
剣を追いかけるような軌道で血液が噴射。
――この3日間でかなり戦えるようになったな。
ジェネラルは怯むこと無く、横薙ぎをするがこれも服を掠めるだけに終わった。
しかし、その勢いを利用して旋回からの裏拳。
「――クッ」
腕をクロスしガードするも、車と衝突したよう衝撃で後方へ吹っ飛ばされた。
当たる直前、後ろへ飛ぶことで衝撃を吸収したつもりだったが、それでもこの威力か。馬鹿力め。
壁に激突し、衝撃が内臓へと達し少量の吐血。
「装備が弱いからダメージを殺しきれないな。いや――違うな。そうじゃない」
口内に残った血を吐く。
ジェネラルは既に追撃の跳躍をしていて、ナタに体重を乗せ俺を突き刺そうとしてた。
――少し戦えると言って良い気になっていた。俺まだまだ弱い。
横っ飛びでそれを回避。
――こんなんじゃ駄目だ。
縦横無尽に迫り来るナタを、小さな動きで回避しながら、自分の至らなさに嫌気をさしていた。
ナタが頬を掠め、紅の線から血が垂れる。
――もっと強く。コイツを圧倒出来なきゃ駄目だ。
肩が裂かれ鋭い痛みが走る。
――もっと。もっとだ。俺は強くなるんだッ!
【おめでとうございます。孤高の魂と、力への渇望によりスキル:王の資質Lv1を手に入れました】
【スキルスロットに空き枠があるため、自動で追加されます】
【スキル:王の資質Lv1を使用します】
【ステータスがアップしました】
ウィンドウが現れたと同時に俺の顔面へナタが振り下ろされる。
ジェネラルには様子見という概念がない。
一撃一撃が必殺の攻撃、だが――。
振り下ろされるナタを避けるでも無く、剣で受けるでもなく俺は素手で受け止めた。
衝撃は腕を伝い身体へ。そして身体から脚へと走り抜け地面へと到達。俺を中心に地割れが起きる。
ジェネラルは、素手で受け止められた事を信じられないのか、唾液を撒き散らしながら豚のように叫ぶ。
研ぎ澄ませ。集中しろ。前を向け。コイツを倒して――。
「――俺は、次に行くッ!」
一閃。
ただ、一振。
振り下ろされた剣は、斬撃を生む。
限界まで研ぎ澄まされた至高の一撃。
斬撃はジェネラルの身体を両断するだけに留まらず、地面を削り、壁を切り裂いた。
凄まじい轟音と衝撃波を生み、ゴブリンジェネラルを倒した。
胴体を斜めに両断されたジェネラルは、死の間際声を発する事も出来ず静かに絶命した。
【ゴブリンジェネラルを討伐しました。30秒後に帰還します】
【経験値30獲得しました。R4クロード・ラングマンがレベルアップしました。スキルポイントを5獲得しました】
【銀貨×1000 力の種×1 資質の葉×5 獲得しました】
【おめでとうございます。レアドロップ R3ゴブリンジェネラルの腕輪を手に入れました】
【アイテムは自動的にボックスに収納されます】
やかましい程の告知を一通り確認し、絶命したジェネラルに目を向けること無くリリア達が待つ扉へと引き返した。
――スキルがなくても勝てたのは間違いない。だがこのスキルは、ダンジョン攻略において絶対に必要だ。
俺が手に入れた『王の資質』の取得条件は、単独でフロアボスに挑み、アイテム未使用、HPが50パーセント以下の状態で、相手に対し一切の攻撃をしない事が条件。
簡単そうに見えるがそれは間違いだ。
『seek the crown』は本来、戦闘はフルオート。
全てのキャラクターがAIの判断により、自動的に動く。
つまり、攻撃をしない事がほぼ不可能。
AIの行動基準は、そのキャラクターの背景から算出されるため全く予測できず、本当の人間のような動きをするからだ。
戦わず逃げ回ってばかりのハズレキャラもいるが、戦闘という基準が満たされないのか、そいつらがスキルを得る事はなかった。
取得難易度が鬼畜な分、能力も破格で60秒間全ステータスが50パーセントアップする。
ただMP使用量が固定で、総MPの50パーセント。使い所を間違えれば、自分の首を絞めることになる。
俺は今自分の意志で体を動かし、ダンジョンに潜っている。
本来、鬼畜難易度であるはずの取得条件なんざ、なんの問題にもならないということだ。
扉の外には全員がソワソワしていて、俺の姿が見えると目を見開き驚いていた。
「クロード君、お疲れ様」
「ほ、本当に1人で倒しちゃったんですか!?」
「当たり前だろ。自殺志願者にでもみえてたのか?」
「そ、そんなこと言ってないじゃないですか! いちいち皮肉っぽいですねぇ! そんなんじゃモテないですよーだ!」
リリアは頬を膨らませぷんすかしている。機嫌を損ねたらしいが、そんなに変な事を言ったつもりもない。
「さすがっすねクロードさん!」
「お前もこれくらいは直ぐに出来るようになるさ」
「ワシは! ワシはどうじゃクロード!」
「お前は……」
次の瞬間、俺達は支援施設へと転移された。
言いかけてたが、本人には伝えなくて良かったのかもしれない。
どうせギャーギャー喚いて面倒な事になるからな。
【ステータス】
名前:クロード・ラングマン レベル:5→6
職業:無職 疲労:26
称号:憤怒の虐殺者
装備:R5復讐者の剣(耐久値35/50 )
HP: 125/125→60/150
MP:17/ 17→10/20
攻撃力30→33(+30) 防御力21→22(+5)
魔攻15→16(+5) 魔防13→15
速度15→19(+3) 回避8→10
称号:憤怒の虐殺者
攻撃力+10 防御+5 魔攻+5
R5復讐者の剣
攻撃力+20 速度+3
スキル 剣術Lv1 王の資質Lv1
スキルポイント15
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