第095話.路を塞ぐモノの正体

 この時、ワタシがスッと指差したのは……元来た入口の方向。そして、力強くニックにこう聞いたんです。


「来た道をまた引き返します。ニックさん、全力で走り抜けましょう! 欄干の火の玉も後2つしか浮かんでません。時間にして、およそ10分位です。ニックさん、行けますか?」


 ニックも力強く頷きました。ワタシ達は踵を返し、入口へと向かい走り始めました。走りながらニックは火焔弾の溜めを、ワタシは壁ドン♡の溜めを、それぞれ開始して。











ヒュゴォォッ!


ドッパァァン! チリッチリチリ……



 まず、四方から “風の渦” が飛んで来ました。ニックが口から火焔弾を吐き、迫り来る渦を全て相殺します!


 獄炎と絡まった風の渦が次から次へと、まるで線香花火の様に桟橋から下へヒュルヒュル落ちて行きます。



ズゾゾゾッ……!!!



 風の渦が飛んで来ると同時に、地面から “何かの手” が競り出て来て行く手を阻もうとします。


 この巨大な手は風で出来ており、手首に当たる部分にはクリスタルグリーンの透き通った鱗が、手の先には同じく透き通った爪が付いてる『筋張った』見た目です。


 まるで……ドラゴンの手?




「危ないっ、壁ドン♡っ!」


ズザザザッ……グラァっ!




 でもワタシが壁ドン♡を手首辺りの鱗に直接ぶつけた反動で、この巨大な手はヨロヨロとバランスを崩します。



ビュヴァァァッ……!!!



 その隙に、巨大な手の脇をスルリとすり抜けて行くワタシが目にしたのは……目前に迫り来る、巨大な竜巻。


 天空の桟橋もろとも、竜巻で舞い上げるつもりでしょう! 今度はニックが、火焔弾で竜巻を押し戻します。



ドッグォォォ……ンッ!!!



 すると火焔弾は竜巻を吸収し、何と中空で大爆発を起こしたんです!



シュフォォォッ…… キラキラ……



 大爆発で夕空に赤い流れ星が沢山、尾を引いて流れる中。ワタシとニックは永年連れ添った様な、息の合ったコンビネーションで桟橋を駆け抜けます。


 すると今度は前から、手首のものより巨大なクリスタルグリーンの鱗を背中に纏った風の胴体が桟橋に巻き付きながら2人に迫ります!



ベキ……ッ! バキ……ッ!



 桟橋の踏み板を突き破って、巨大な尻尾が襲って来ました! ワタシは攻撃をギリギリで躱しつつ、カウンターの顎クイ♡を尻尾にぶつけて軌道を変えます。



モワァァァ…… ヲォォォ……



 尻尾が空けた穴から、触腐性のガスが霧の様に立ち込めて行く手を阻みます。ニックは羽根を扇いで “火災旋風” を起こして、ガスの霧を蒸発霧散させてしまいました!



バチッ……バチッ……



 2人で、火災旋風の横を走り抜けました。でも走り抜けた先で、ワタシを横凪ぎに払おうと巨大な手が! ワタシはベリーロールの様に跳んで、身を翻す様に躱します。



 視線は、空中で桟橋から夕空へと移り……まるでワタシには、秋の紅葉狩りの様な景色に見えたんです。











 その時初めて、自分達に襲い掛かったモノの顔を見たんです! クリスタルグリーンに輝く巨大な龍の顔に、風を纏った巨躯が繋がって居て。



【よくぞ此処まで参られた、“選ばれし者” 達よ。ワレは見極メル者・・・・・、『烈風龍』なり……見事倒して我が主、妖精王を認めさせてみよ!】



 その正体は “7世界の王” を主と従う、7匹の古龍のひとつだったんです!

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