第090話.妖精王が求めたお方

 確かに長老さんの申し出、とても嬉しいです。でもワタシにだって……



「ゴメンなさい、長老さんっ! でも、ワタシもこの地上界で各地を巡ってしたい事が有るんです!」


 ワタシも必死の表情で、自分の言葉で長老さんに思いの丈をぶつけたんです! お互い、後悔しない様に。


 長老さん、ワタシの言葉を目を見つめたままずっと離さず、一言一句聞いてくれました。そしてフォッフォ!と満足そうに高笑い。



 あ……試されてましたね、ワタシ。テヘ♡



「ならばアカリさん、そなたにお願いしたい事が有るのじゃ。各地の行商路の確保や商隊の護衛の為、今やキュルミーはここスメルクト大陸だけで無く他の大陸全域にも活動範囲を広げておる」


 その上で、長老さんは現在のキュルミーの現状をワタシに説明します。


「しかし治癒の能力を持つキュルミーはまだ希少、故に戦闘などで傷を負い後遺症に今でも苦しめられておる者が沢山おるんじゃ」


 そして長老さんは暫く考えた後、ワタシにこう切り出したんです。


「アカリさん、これから5大陸の各地を巡るつもりじゃろ? 立ち寄った町や村でもし怪我に伏せておる者達がおれば、積極的に治療を施してやって欲しいんじゃ。約束して……貰えるかの?」


 本当の “落としどころ” は、そこだったんですね! ワタシはニッコリ微笑んで、力強く答えました。


「はいっ、喜んで!」



 でも本当に試されてた点は、そこでは無く……



 ワタシの力強い返事に満足した長老さん、徐ろに立ち上がり顔を上に向き両手を天に掲げます。そして、中空に向けて大声で語りかけ始めたんです!


「今迄の事、全て “視て” いらしたのじゃろう? この者こそ、アナタが求めておられたお方じゃ! どうなさるおつもりじゃの、『妖精王』?」



……『妖精王』ですってぇ???



 すると、はるか上空の方から透き通った澄んだ声が“降りて”来たんです。



【今、霧の結界を解放します。代理者よ、この結界を越えて私の神殿へ来る様に “選ばれし者” に伝えては貰えませんか?】



 代理者……長老さん?

   選ばれし者……ワタシぃ???



 その声が “降りて” 来た直後、今までキュルムの町を覆ってた深い霧が徐々に薄くなりスーッと視界が開けて来ました。


 そして霧が完全に無くなった時、今迄見えなかったキュルムの町の向こう側に広がってたのは……光輝く白亜の神殿だったんです!


「 “あの方” はワシらキュルミーの源流であり、守護者でもあるんじゃ。そなたにのみ会う権利がある、と言っておるの。向こうもそなたに会いたがっておる、行って来るがイイのじゃ……」











 ワタシとニックは、神殿の前に来ました。そのあまりの荘厳さに暫し足を止め、言葉を失ってしまいました。神殿を見上げなから、ワタシはニックに聞きました。


「こんなスゴい所に住んでる『妖精王』って……ねぇニックさん、『7世界の王』ってどんな人達なんですか? やっぱり、超常的な力を持ってるんですか?」



【お姉ちゃん、“超常的な力” って言い過ぎー! 『7世界の王』って、各種族の王様なのー。各々の世界で一番強い人たちなのだー! エライのよー!】



 ひょっとしたら、厳つい男達なのかも知れませんね……とにかく、会って確かめない事には話は進みません。


 それにワタシ、再びくらっと来ます。ズキッ……また、あの時と同じ頭痛。再びワタシの事を……呼んでいるのでしょうか……?


「『妖精王』がワタシ達を呼んでます……さあニックさん、神殿の中に入りましょう」


 謎の頭痛に呼ばれる様に、ワタシとニックは神殿の中に消えて行ったのでした……











 ワタシ達の背中を見送りながら、長老さんはひと言……こう呟いたんです。




「宿命は受け継がれるのじゃな。これで良かったかの、『妖精王』……レイラ様?」











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 このままワタシ、すんなりと妖精王レイラ様に謁見させて貰えますかねぇ?


 だって引っ掛かる点、今の段階で既に幾つか・・・・・見つけましたし……



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