第089話.見違え過ぎてる3人

 救護施設のお医者さんや看護婦さん、娘さん達3人の奇跡の回復ぶりに全員ビックリ顔! それを横目に、ワタシ達5人は悠々と病院を出ます。


 そして皆で、このまま長老さんの家へと雪崩れ込んだんです!


「コレはどういう事じゃ……? ワシはただ、代わりにお見舞いに行ってくれとお願いしただけじゃのに……」


 口があんぐり空いたままの長老さんの目の前には、ピンピンとした健康的なきぐるみ美少女が3人。しかも見た目がツルツルたまご肌なのに、肌がしっとり潤ってる様な……




「これが本当に、『モフモフ』されたあの3人なのかの……?」


「そうなんですよ、長老さん! もふもふされて奪われた“個性”まで、取り戻せたんですよ」




 激変した娘さん達3人に長老さんが順番に声を掛けると、まずイヌさんが穏やかな口調で長老さんに答えます。




「ノゾミ、ご苦労じゃったな。3人とも無事でいられて良かったのじゃ」


「お爺さま、アタシ達みんなアカリさんに治してもらったんです!」



 そして、ネコちゃんが身振り手振り加えてアピールします。




「カナエ、活発なお前の事じゃ。2人をあっちこっち振り回さなんだか?」


「爺や、アカリさんがアタシ達をどん底から救い出してくれたんだぜ!」




 最後に、ヒツジたんが甘えた表情で長老さんにすり寄ります。




「タマエ、辛くなかったか? 甘えん坊だから、一番心配だったんじゃ」


「お爺ちゃん、アカリさんはアタシ達を助けてくれた『奇跡の女神』なの!」




 今度は、こちらの方がビックリしましたよ! 名前も、「ノゾミ」「カナエ」「タマエ」って! アナタ達、3姉妹なんですか!



 でもまた、名前さえ分かれば恐ろしく分かり易い3姉妹だこと♪


 だって個性を取り戻せた事で、3姉妹の性格の違いも明らかになって。典型的な「長女型」「次女型」「末っ子型」の性格丸出しですから♪











 長老さんは両手でワタシの手を取り、深々と頭を下げて言いました。


「そなたには、すっかり借りが出来てしまったの。もうそなたも家族同然じゃ、ワシらと一緒に……この町に住んでも良いんじゃよ?」



 確かに、キュルミーの人達にとって『モフモフ』の後遺症は脅威です。だからたったひとり、後遺症を治癒出来るワタシを絶対手放したくない、と思うのは自然でしょう。


 現在は友好的でも、未来では後任の次期長老さん次第で一生町から出られなくなる……なんて事も有り得る訳ですからね。




 そんな考えが、次から次へとワタシの頭にもたげます。でも、ワタシだって……

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