第088話.眼の前に或る奇跡②


 そして、数時間後……



 3人とも再び立って歩ける様になった頃、今度はワタシが疲労困憊で逆に病室のベッドで横になるハメに。


「常に神気を全開で放出するから、疲れもハンパ無いです」


 この能力……実戦では使えないかもですね。実戦での治癒回復方法は、また別の手段を考えないと行けなさそうです。


 3人は試しに、お互いの肩や腰をモフモフしない程度に軽く触り合ってみました。しかし、腰砕けの後遺症は全くありません。


 皆輪になって抱き合い、泣いて喜びます。 











「良かったですね、腰砕けが治って」


 ワタシが穏やかな顔してそう言うと……3人ともビックリした顔でワタシを覗き込みます。え、ナニを言ってるんですか?みたいな顔をして。


 そして、まずヒツジたんが教えてくれました。


「アカリさん、アタシ達キュルミーの間では『モフモフ』されたら発症するこの一連の症状は、治す事が不可能で一生再起不能な“不治の病”になるっていう話があって、言わば常識なのよ?」


 ワタシもニックも、そのカミングアウトに腰を抜かす程ビックリしました!




【え~~~っ!??】×2


「不治の“病”って、こっちでは病気・・として伝わってるんですかぁ〜!??」




 えっ、ナニ? って事はこの致命傷を治せるのはこの地上界でたったひとり、ワタシだけしか居ないって事ですか?


 神気の帯で治癒が出来る様になったのも、ついさっきが初めてですし……



 そして、ネコちゃんがニックと手と翼を取り合いキャッキャはしゃぎます。この子、すっかりニックと仲良しです。ウマが合うんでしょうか?


「それなのに、そんな“不治の病”を治す事が出来ちゃうなんて……アカリさん、スゴいよおっ! ねぇ、ニックちゃん!」



【そうそう、ボクのお姉ちゃんスゴいのよー!】



 最後に、イヌさんが尊敬の眼差しでワタシを見つめ、こう聞いて来ました。


「一体アナタは、何者なんですか?」


 そこまで言われて、ワタシも悪い気はしません。サービス、サービス♪と言わんばかりに“萌え袖”から気持ちはみ出てる2本の指をくの字にして、ピッと顎に当てました。


「『日本一アキラメの悪い女神』、ですっ♡」


 萌え袖で可愛さ倍増、それを見た3人も大ウケです! ワタシも女神としてこれから進化しますが、決めセリフだって一緒に進化するんです♡


 みんな大喜びでワタシの首に細腕を巻き、キャッキャ喜び合ったんです♪


「みんな、く、首が痛いって……」




 神気の帯を握った3人に起きた、更にとんでも無い事……そう、もふもふされ奪われた“個性”まで取り戻せて居たんです!











 病室で、ニックと一緒に笑い転げる3人の娘さん達を見ながら……ワタシはひとり、物思いに耽ります。


 3人とも皆、とても根が素直な女の子達です。先程のワタシの言葉は飽く迄“決めセリフ”、「『女神』女の子」という意味で受け止めてくれるのでしょう。


 誰も『女神』なんて見た事無いので、尚更です。その方が、ワタシもホッとします。でも、実際にワタシは「大天使」と「人間」の間に生まれた……『女神』の血を受け継ぐ女の子。


 ウソでも気付いて欲しかったな……と少し寂しくもあります。




 正直、天界でも地上界でも無い日本生まれのワタシには女神がどんな姿してるのか知る由も有りません。


 でも、そのうち自分の姿が女神に変わって行った時、今とは逆に自分が元々人間だった事を誰にも気付かれなくなったらどうしましょう……


 そう、考えてしまったんです。でも3人の娘さんみたいに、ワタシが女神になる事で助ける事が出来た命もあるんです。



 これから先の旅路、どんな結末を迎えても女神になった事を後悔する事だけは決してしない様にしよう……改めてそう自分のココロに誓った、ワタシなのでした。

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