第083話.少女達3人の行く末

 ワタシとニックと長老さん達、背筋を伸ばしたフィリルの凛とした後ろ姿が階段の上に消えて行くまで見送りました。


 振り返ると、ミストシャワーの水玉がまだキュイぐるみに貼り付いてたみたいです。立ち上がると、キュイぐるみをツツーっと伝ってワタシの素肌へと滑ります。


「そりゃあワタシだって女子高生ですから、若い素肌は張りが違いますよぉ」


 腕の表面で滑る水玉を指で軽くプン♪と払いながら、ワタシは周りを見回しました。


「おい、アレと違うかの?」


 長老さんにちょんちょんと突かれ、ワタシとニックが長老さんの指差す方向を見てみると……


 擦りガラスの仕切りの向こうのソファーに居たのは、先程まで絶賛モフモフ中だった3人のキュルミー少女達。気を失って伏せてる状態で発見したんです。


 ユサユサと起こした少女達の内2人は何とか立てますが、1人はまだ腰が抜けている様です。



 ワタシは半分人間では無いから、モフモフから生還出来ましたけど。モフモフに堕ちた、この子達はもう……



 長老さんとワタシは、二度と闘えなくなった3人のキュルミー少女達の元へと歩み寄りました。ニックは心配そうに隙間から覗き込みます。


「遅くなって、すまんかったの。そなた達3人は、絶対に見捨てはせんぞい!」


『ちょ、長老さまぁ……!』×3



 今は、長老さんと少女達の世界です。ワタシはこの場を一歩引いて、存在を空気にした方が良いですね……



 でも、だからって何もしないのは間違ってますよね。ワタシは何も言わず、涙を流す3人の少女達の背中から、3人の肩を包み込む様にそっと優しく抱きすくめます。











 少女達3人の気分が落ち着いた所で、長老さんとワタシとニック、そして少女達は北の漁村を後にしました。


 そして、再び深い霧の中をワタシの頭痛ナビを頼りに歩き続けてキュルムの町に戻ります。


「ここから先は、私が少女達を救護施設へ送り届けましょう」


 この後、従者さんが少女達を町の救護施設へと送り届けてくれたそうです。あの子達、大丈夫だと良いんですけど。


 例え、キュルミーとして仲間達と闘う事が出来なくなったとしても……生きてさえ居れば、恋をしたり……まだまだ女の子としてやりたい事、いっぱい出来ますから。



 でも、ワタシは……人間として、もう……



 ワタシもそう……地上界に降臨したばかりの今の段階では思ってました。


 でも、まさか後に……この旅の遥か彼方、魔法大陸マガンティでワタシ自身恋に落ちる事になろうだなんて……

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