第081話.あの子のレアスキル

 えーっと、今のこの状況を説明すると……フィリルの今の “精神体” って、『にゃんモード』がベースになってるんですよね……


 じゃあ今迄の、ミントセキュリティサービスを指揮してたもうひとつのモード・・・・・・・・・は一体、何処へ行ってしまったのでしょうか?



「アカリさんに、ただで仲間にしてくれとは言わないわぁ~。代わりに、私の能力を教えてあげるねっ! だけど、今の『にゃんモード』の時しか使えないんだけどねぇ~☆」


 フィリルは、壊れてるブレーカーの所までワタシを連れて行きます。


 そこは今だに、天井のスプリンクラーからミストシャワーが降り注いで居て。フィリルの周囲は特に、身体から発する水蒸気が立ち込めます。


「アカリさん、コレが私の“奥の手”なのぉ~☆」


 その言葉を残し、フィリルはバタンとその場に倒れてしまったんです。どうやら、気を失ってしまった様です。











 でも、その瞬間……同時に何処からともなく、ワタシに纏わり付く様に水蒸気が湧き出て来ました。そして、水蒸気がだんだん人の形になり……フィリルに為ったんです!


 フィリルはワタシの首元に両腕を絡めて片足をハネ上げ、甘える様にもたれ掛かってます。


「対象物のニオイを予めインプットしておけば、例えどんな場所に隠れてても探し当てられるのよねぇ~☆」


 どうやらこのフィリル、“精神体”らしいです。しかもこの精神体、ポニーテールを結ってるって事は……どうやら『にゃんモード』のフィリルがベースになってるみたいなんです!


「コレが私の奥の手よ〜☆ グランプスの “傭兵” と同じ、少し特殊なジョブのレアスキル。名を『無限探査』 インフィニティーって言うのぉ~!」


 フィリルがそう言いつつシャワーに手をかざすと指の先だけ、水蒸気の様に消えて無くなります。


「今の私の体躯は霊体、なろうと思えば水にも空気にだってなれるわよぉ~☆」


 この能力を使えば、異世界や異次元を覗く事はモチロン、其処へ行く事だって可能だとフィリルは言います。


「そう、行こうと思えば……アカリさんのココロの中の “桜の大樹” へだってね☆ ちなみにこの時もうひとつのモードは、私の体躯の中で眠ってるの」


 クスッと微笑みながら、爆弾発言を投下するフィリル。キャーっ、まさかあのシーン ウサギとキス♡も見られちゃってたりして?


 うわぁ……正直、フィリルさんのレアスキルは大変魅力がありますね。行こうと思えば、論理上は『神界』にだって行けちゃうんですか……?


 いやいや、とぶんぶん首を横に振るワタシ。


 そんな、命を粗末にしちゃダメっ! 行けるのはたぶんフィリルの剥き出しの “精神体” だけ、危険過ぎます!



 今のは、『最初から思い付かなかった』事にしておいた方がイイですね。











「コレは、私の中の『にゃんモード』の部分だけが外に飛び出た、言わば私の分身なのよぉ~!

もうひとつのモード、『清楚モード』では出来ない “私” の強みなんだからっ☆」


 フィリルはそう言いながら、いとおしそうな顔をして語尾に合わせて優しくツンツン!と人差し指でワタシの鼻頭を突付きます。


「だけどね、デメリットも存在するの。ココロを受け入れる相手の趣味思考、思想や宗教に至るまでカンタンに染まっちゃうの☆」


 そして、フィリルは少し俯いて……フッと淋しく笑って言いました。


「だから、もし相手のココロが黒く染まっちゃってたら私のココロも黒くなってく……一度受入れちゃったら自分では止められない、『諸刃の剣』なのよ☆」


 本当は、余り口には出して言いたく無いんでしょうね。


「それから、今から言う事はもうひとつのモードだったら……絶対に誰にも話さず封印してしまうだろうから、私から教えてあげるねっ☆」


 せ、責任重大ですね……ゴクッ。


「私の一族でね、悪い相手に騙されちゃって……捕まった末に自分のココロを強引にドス黒く染めさせられて、身を滅ぼした人も居るらしいよぉ~」



 そしてひとつ、約束したんです。


「今言った事、もうひとつのモード……『清楚モード』には絶対に内緒ねっ☆」



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