第076❀.神翼ウサギとワタシ

 一体、どれだけの闇を沈んだのでしょう? 闇の重さに、指ひとつピクリとも動かせません。


「ごめんなさい、お父さん……ワタシ、会いに行けなくなっちゃいました……」




【ちゃんと、人間に絶望出来たじゃ無いですか。偉い、えらい】




……???


 ワタシの希望が0に潰えて、目から完全に力を失った……正にその時。




【大事な事だから、もう一度言いますよ☆ ちゃんと、人間に絶望出来たじゃ無いですか】




 今……声が聞こえましたよね???




【ほぉ、ワタシの声が聞こえるのですか? 流石はあの方・・・の血族ですね】




 そして、ふと流した涙の粒がふわりと宙に舞った時……今、自分が居る場所を理解したんです。眼前に広がる、満開の枝垂れ桜しだれざくら……あの時夢の中で見た、桜の木です!



【今回の件を通して、アナタは思い知ったんですよ。如何に自分が無力で……何の決定権も持って無いと云う事をね】



 ああ、ワタシ……所詮、只の高校生なんです。頭も良く無いし、人脈も金も無いし。


 人並の能力しか持って無い……この地上界では全然、ダメ人間なんですよね。



【自分の無力に、きちんと絶望する事……そうしたら初めて、自分に何が出来るか見えて来るでしょ? アナタの持ってる本当の力に……アナタ自身が気付くんです】



 ボォ~ッと、ぼんやり目の前に……4枚の翼を生やしたウサギが、逆向きに浮いてます。ふにゃんとカワイイ、ミニウサギ。



【資格…… 準備…… 覚悟…… 時間…… 。 これでアナタは『資格』と、新たに『覚悟』を手に入れた訳ですね】











 ふと、ミニウサギが闇のとある1点を凝視すると……ぽぉっと文字が浮かんだんです。



───────────────


神の証を手に入れろ!

例え全て失なう事になろうとも


───────────────



 忘れもしません、この言葉ってニックが教えてくれた父からの伝言です!



【ちゃんと人間に絶望出来たでしょ? 図らずも、目的の半分は満たせた訳ですね。でも……】



 残り半分が大変なんだけどね、とミニウサギはフンと鼻を鳴らします。



【アナタ、何で泣いてるんですか?】



 ワタシ、気付いたら涙を流してました。確かにワタシ、もう二度と“冒険者”として……“女神”として立ち上がる事が出来なくなってしまったんです。




 クスクスクス……




 ミニウサギは、ワタシのひと言を聞いて笑いを堪えきれない様です。



【何が可笑しいんですか……?】



 闇の中だから脳内会話で。すると、ミニウサギがワタシに衝撃のひと言を放ったんです。



【だってアナタ、まだ“女神”としてのスタートラインにも立てて無いでは在りませんか?】



 なのに、“女神”として立ち上がる事が出来ないって言われてもねぇ……って顔をしてるウサギ。



……へ???



【だってアナタ、“女神”なら必ず有るハズのモノをまだ持って無いんですから。神気で出来た、をね】



 そう言ってミニウサギは、んチュッ♡とワタシに優しく口づけしたんです。



【特別にワタシの分、お裾分けします。ちゃんと受け取りに行って来て下さいね、残り7ヶ所・・・



 もう一度立ち上がって、アカリさん……そう、ミニウサギは励ましてくれてる様です。



 キスをした途端、深い闇の中で自ら太陽になったみたいに全身からシャンパンゴールドの輝きが増すワタシ……運命は、まだワタシを見捨てては居ませんでした!


 いや、むしろここからが本当の意味で『日本一アキラメの悪い女神』アカリと名乗るスタートラインになるんです!



【ワタシは 女…… サラ…… ティ。今のアナタではまだ、名前までは伝わら無い様ですね】











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 同時期、場所は変わって。此処は日本に在る、ワタシの生家。


 家にはワタシも、ママも居ません。有るのは壁に貼られた……運命の日に撮って貰った、ワタシの花嫁姿の写真。


 ワタシがミニウサギに会った、正にその瞬間。写真がスウッと、まるで月光を浴びた様に青白く発光したんです。



 そして何事も無く、また元の写真に戻ります。でも、写真のワタシは……




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 結局、ミニウサギの名前は分からず仕舞い。でもあの方・・・の血族とは、一体? いえ、ワタシの中ではもう既にその解は出てます!



【さぁ、もう行きなさい。アナタの魂はもう大丈夫です。仲間たちがアナタが帰ってくるのを、待ってますよ】



 あれれ、ワタシ……自分の意志で浮いて、自由に動けてますよ? ただ時々、天地が逆になったりするんですけどね。


 ワタシはふわり、ふわりと意識の向こうへ戻って行きます。今度はノックアップストリームでは有りません!



【最後に、ヤツらの理論……ワタシには通じませんよ。人間では有りません・・・・・・・・・から。それは、アナタにも当て嵌まる筈ですからね!】



 勝手に、自分に限界を創らないでね!と。











✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



 闇に沈むワタシの背中・・から全身へ、シャンパンゴールドの輝きが!


 でも、この瞬間こそワタシの“人間の証”を失う直接のきっかけに……



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