第074話.あぁ、救いの手です
もしもモフモフから腰砕けまで、フルコースを喰らい尽くされてしまったら最期……ワタシの
牙と爪を抜かれます。闘う理由を、誇りを、ワタシを形作る全てを奪われます。そうして、ワタシの未来は永遠に閉ざされてしまうんです。
まるで身体に異常は無いのに、パンチや手を見ただけで 恐怖を感じて体が震えてしまうボクシングの後遺症「パンチ・アイ」みたいに……
闘いを意識しただけで腰砕けになってしまい、戦闘意欲が萎えて二度と冒険者として拳を振るう事が出来なくなってしまうのでしょう。
父を追いかける資格も、永久に無くしてしまいます。だから完全に希望が0にならない限り、歯を食い縛って運命に逆らい続けます!
だってワタシ、『日本一アキラメの悪い女神』なんですから!
ワタシ、目の前が真っ暗になってもまだ目に力を失ってはいません。ワタシにはまだ、一緒に北の漁村に来た長老さんが居るんですから!
それに、ワタシには……
その次の瞬間、ワタシに馬乗りになり後ろ手に捻り上げてた男がいきなり爆ぜて後方へ飛ばされたんです!
バッサバッサ……バッサバッサ……
翼の羽音が聞こえたのは、階段に続く出入口。でも次の瞬間、着地に失敗したのか階段を転がり落ちる、
ドンガラガッシャーン!!!
え……ただ、階段を転げ落ちただけでしょ?
地下トンネルには何も無かった筈。何でそんなに賑やかな音するんですか?
でもニックのその自由奔放さ、何時だってワタシのココロの清涼剤なんですよね。
【呼ばれて無いのに、ジャジャジャジャーン!】
其処には巨大な火球を嘴の前で展開してる、
【よくも、お姉ちゃんをイジメたなぁっ!】
えっ、ニックも闘う事が出来るんですか? それにその大きな火球って、一体……?
そして階段の上からもうひとり、懐かしい声が降りて来ます。
「さぁアカリさん、そなたにまだ勇気が残っているなら立ち上がりなされ。地面に這い
ワタシの事を認めてくれてるのか、決して甘やかせてはくれません。その声に導かれる様にゆっくりと、ふらっと立ち上がります。
「アカリさんなら、再び立ち上がると信じておったよ。ではこれで3対3の五分じゃな、『グランプス』の現当主……ヴォジャノーイのリークよ」
誰かが、階段から降りて来ました。降りると、だんだん顔が……長老さんです! 涙が、ジワッと滲み出て……
「しかしアカリさん、今回の行動はちと軽率じゃったな。3人をひとりで相手するなんて……」
「すみません、退却するタイミングを誤ってしまいまして」
「まぁいいじゃろ、お説教はキュルムの町に帰ってからでの。今回しなければならんのは、『人質の救出と退却』じゃからな」
長老さんのそのひと言を皮切りに、ニックは溜めてた火球をぶっ放したんです!
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