第072話.最悪の事態なのです
『組みにくい相手と不利な状況を承知で闘うのは“蛮勇”と言って、誉められた行為では無い』
今や胸キュン♡流格闘術を封じられ、どの系統魔法も一切放出出来ないワタシ。羽根を
地下トンネル、手掘りはたまたまでしょう。
でも此れ等小さな違和感は、寄り集まると上下左右……四方に手足を伸ばし始めるのです。
そんな“蜘蛛の巣”に、ふわふわ飛ぶ蝶の様に絡め捕られてしまったんです。戦闘経験値が少なかったんですね。
でも此処で、もしワタシが奥の広い事務所にもう一度戻る事さえ出来れば……再び体制を立て直す事が出来るかも?
でもその目論見も、先程の男を含め3人組には全てお見通しでした。しかも挟み打ちになってる、この状態では分が悪くて。
スキル『傭兵』の効果のひとつとして、先制攻撃は通用しません。折角出来た擦り抜けられる隙間も、全身で受け止められてしまいます。
しかもスキル『傭兵』の効果のもうひとつ、オートカウンターで足を外掛けされて。首に腕を押し当てたまま、上から伸し掛かられたんです!
ぐふぅっ……!!
「うぅッ、最初の2人組とは動きが違う……?」
1対3では流石に多勢に無勢、ワタシはクッと唇を噛んで横目で睨み付けます。
それはそうです、最初の2人組はワタシがか弱い女の子、と完全にタカを括って油断してくれて居たんですから。
でも、今度の相手は3人組です。しかも最初からスキル『傭兵』を出し惜しみしないヤバい輩達が相手なんです。
仰向けのワタシの上で馬乗りになり、腕を組んで上から覗き込みます。
最近この地上界に来たばかりで戦闘経験値が限りなく無いに等しい女の子の、しかも独りだけの単独行動……必然的に、こうなりますよね。
此れで『グランプス』が最初から本気で、もし最初の2人組にも女の子と油断する事無く挑み掛かられたら……今のワタシでは、恐らく2人組にすら勝てないでしょう。
この事態を招いた原因は先の2人組を倒す事が出来たと舞い上がってしまった、その後事務所に居た男にほんの一瞬でも恋心を抱いてしまった、
余りに浅はかな失態に、ワタシはココロの中で悔し涙を流したんです。
そんな惨めなワタシに追い打ちを掛ける様に。男は馬乗りになったまま、ワタシの頬にずっと平手打ちを繰り返します。
ペチン……ペチン……
ワタシの
その軽いパンチは、精神を嬲られる様に感じるんです。ワタシの決意を、誇りを、涙を全否定されてるみたいで……
「只で慰み者になんて、なってやるもんですか! 最後まで足掻くからっ、生殺与奪はアナタ達が握ってるんでしょ!!!」
ワタシは冷静な判断が出来ず、怒りに任せ自分でもビックリする位の大声で『グランプス』に咆哮して居たんです!
でも、敵もさる者。咆哮して暴れても、回転したのは身体だけ。宙に浮いた男、馬乗りのまま座る位置がお腹から背中へ。
つまり、ワタシの姿勢が仰向けから腹這いに変わっただけだったんです。何て体幹の強さなのかしら!
「オメェ今……確かに猛ったな!」
ニタァ〜〜〜っ……
「我慢出来ず、『
その瞬間、ワタシの顔は一気に青褪めてしまいました。何故なら、長老さんから言われてた注意事項を思い出したからなんです。
決して、『野生に還る』なって。
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