第070話.悪の徒花、恋しぐれ
拐われた3人の少女達を、民家の外に連れ出そうとしたワタシ。そして事務所の入口で鉢合わせした、アダロの毛皮を着た男。
「あの……だな……」
擦った揉んだの押し問答の後、互いにお目々パチパチ。暫くフリーズして……男の方が先に、この空気に堪えられなかったのでしょう。
「お、オマエ、ココを誰の縄張りだと思ってるんだ “お” っ!!!」
罰の悪そうな顔して、敢えて
初恋はワルな男に惹かれる、て本当かも。男は噛んだ事をコホン、と咳払いで誤魔化します。
「しかし、事務所の中でよくもまぁこんなに暴れてくれたなぁ。小娘なのに、大したモンだ。しかし、コレで形勢は逆転だな。なぁに、キッチリ落とし前を付けてもらうだけさ!」
でも、ワタシは少しも慌てる素振りを見せる事無く。男に気付かれない様に少しずつ動きます。
そう、自分と引き戸の間に男がサンドイッチになる様に……此処の場所が、一番吉ですね。そして男に向かい、ニコと笑って言いました。
「ひとつ聞かせて下さい。盗賊団『グランプス』って、悪の利権を守る為なら町娘すら平気で拉致する……そんな、性根の腐ったヤツらの集まりなんですか?」
【現当主になって、『グランプス』は変わった】
確かに、ニックはそう言っていましたけど……その通り、品格を貶めてますね。全然、盗賊団の頂点に君臨する「雄」っぽくありませんから!
ワタシは行動するタイミングを見計らいつつ、もう一度長老さんの指示したプラン通りに進んでいるかどうかチェックし直します。
今回、長老さんから指示を受けてた「人質救出プラン」は、こんな感じです。
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【人質救出プラン】
1.敵対勢力の口から言質を取る、すなわち己の悪事を認めさせます。
2.拐われた人質を救出し、敵対勢力の残存兵力を削りながら退却します。
3.敵対勢力から得た言質を “ 大義 ” に変えて、長老さんが他『ピント団』グループ組織から友軍を募ります。
ただ長老さんはグループの代表であるってだけで、どのメンバー組織も序列は同列で上下関係は存在しないのでこの形を取るんだそうです。
4.長老さん達が「正義」となり、その名の元に集う友軍は大挙して『グランプス』に報復を開始します。
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闘うのは火の粉を祓う程度に、逃げるに徹して。攻勢に廻るのは大義名分を手に入れてから。このプランが上手く行けば、幾ら『グランプス』でも一溜まりも無い筈なんです。
キッチリ「報復」迄するのが『ピント団』流なんですね! この盗賊団の主要メンバーは、恐らく5人。先に2人倒して、あとワタシが相手をするのは目の前の男と外に居る2人だけ……
だから、油断してたんです。2人組を倒したんだから、相手が残り3人でもひとりずつならどうにかなるでしょ、なんて……
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