第067話.届かなかった違和感

 拉致された3人の少女達、無事に発見する事が出来ました。後はワタシ、此処から離れるだけなんですけど……


 早速、盗賊団『グランプス』に見つかってしまい、交戦中です。しかも援軍は居らず、孤軍奮闘してる訳でして。


 ワタシは目の前に迫り来るアクアウォールに手の平をピタとくっ付け、こう言い放ちました!


「行きます……壁ドン♡っ!」


 その瞬間、目の前の巨大な水の壁が崩壊し“水滴の弾丸”となって2人組に襲いかかったんです!


「はがぁっ……!」


 ピント団のキュルミー少女達はみんなモフモフされており地に伏せていたので、被害はありませんでした。


 もちろん、2人組に逃げる猶予を与えるつもりはありません。壁の木棚からオブジェを引っ張り出し、次から次へと壁ドン♡に当てて“飛び道具攻撃”として2人組にぶつけて行きます。


 案の定……ぶつけ続けられた事で頭に血が昇った2人組は漸く、スキル『傭兵』を発現させて。圧倒的な力でワタシを捕まえに来たんです!










 でも、手遅れ!


 捕まえに来た2人組を、ワタシは構えて待機。捕まえに来た腕をスルリと半身ですり抜けつつ、掌底突きを野郎共の1人目の顎に当てて突き抜きました!


「……顎クイ♡ですっ!」


 衝撃が脳天の向こうまで達したのか、1人目は白目を向いてしまいました。


 最初の1人目は相手が女の子だからと完全に油断していたんですが、2人目はワタシの身のこなしを見て手練だと感じたみたいです。


 宙に舞ったままの1人目を隠れ蓑に、タン!タン!とワタシに狙いを定めさせない様にジグザグに跳んで迫ったんです。


「これならどう……壁ドン♡!」


 ワタシは顎クイ♡した1人目をさらに壁ドン♡で吹き飛ばして2人目にぶつけようとします!


 すると2人目は飛んで来る1人目を右脇横でスルリと避け、見えない死角から鋭く長い爪でワタシの心臓を貫こうとします。


 でも、ワタシもそんな動きは百も承知! だって、今の壁ドン♡は左腕で・・・行ったんですから2人目の動きはまる見えです!


 つまり、2人目はワタシに誘導されてしまったんです。ワタシは刺し貫こうとした2人目の手首を取り、自ら回転して爪を避けると共に遠心力で自分の懐に呼び込みます。


「……爆走ホールド!!」


 そして、クルリと回りながら2人目の腕をキめます。これでもう2人目は逃げる事も、受け身を取る事も出来ません!


「コレで、フィニッシュですっ! ……バックハグ♡!!!」


 ワタシは弧を描く様にクルッと回り、斜め上方にブン投げて2人目を天井へ激突させたんです!



グヘッ……!



 2人目は顔面を強打し、白目を向いたままボトッと天井から落下しました。











 そしてワタシはふぅ、と深呼吸をひとつして。何事も無かったかの様に立ち上がり、パンパンと埃を叩きます。


 今の華麗な避け方と云い、ワタシって戦闘技術も飛躍的に上達してるみたいですね。



【でも、この技だったら本当は・・・天井と床に2段激突する筈なのでは……?】



 足りないって事は、何処かにミスが有ったって事でしょうか? 即ち、其れが……今後のワタシの伸びしろなのかも♪


 巷に溢れる異世界ファンタジーみたいに、ただがむしゃらに闘うだけでは……本当の意味で強くなる事は出来ませんから。


 でも、天狗に為らないのは良い傾向ですね。ワタシは自画自賛しつつも、教訓としてココロに留めて置く事にしました。




 でも残念ながら、今の戦闘経験値が圧倒的に不足してるワタシには……『違和感』として捉える事までは出来なかったんです。









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【う・ん・ち・く♡】スキル『傭兵』



 このスキルは如何にも傭兵らしく、戦闘経験値を上げるほど戦闘力が増すスキルです。


・ビルドアップ


 極地に行くと適応能力が上がります。


・先制攻撃無効


 近接攻撃のみ限定で、相手に先手を取らせません。


・オートカウンター


 先制攻撃無効と同時にカウンターします。

どの種類のカウンターか、戦闘前にセット出来ます。



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