第066話.惨状、少女達の安否


カラカラカラ……



 何か危険な気を感じながら、ワタシは恐る恐る扉を開けようとして……あら? 扉がびくともしないって思ったら、引き戸でした。


 すると、目の前に広がってるこの光景……事務所でしょうか?


 事務所には壁一面に木棚が設けられており、色んなオブジェが処狭ましと敷き詰められています。そして向こうにはこちらを背にしてソファーが向かい合う様に設置されています。


 だいたい、この地上界で盗賊団が事務所を構えてるって事自体、異質に映りますね。恐らく、強さの誇示なんでしょうか?


 ふとワタシが目線を斜め前に向けると、右向こうには磨りガラスの仕切りがあります。磨りガラスの仕切りには誰か複数のシルエットが見えており、その向こうから何やら声が聞こえます。




……きゃん、ダメぇっ、背中なでると……

……くうぅぅんっ……


…… “本能”には……逆らえないのっ……

……にゃあぁぁんっ……


……んっ……尻尾を……触らないでぇっ……

……めえぇぇぇっ……




「んまっ、悩ましい声……はっ! 何か、女の子達の声が聞こえます!」


 そう叫んで、ワタシは急いで磨りガラスの仕切りを回り込みました。磨りガラスの仕切りの向こうで、ワタシが見たものとは……











 仕切りの向こうにもソファーが置かれており、そこには何とも冴えない野郎共が2人、どっかと腰掛けてます。


「オレ達は盗賊団『グランプス』だ! オラッ、舐めんじゃねーぞッ!」


 2人ともシャチの被り物はしてませんが、喋り口からしてコイツらも『グランプス』なんでしょう。もしかして、『グランプス』でも下っ端?




彼らの足許にはイヌ、ネコ、ヒツジ……


 もとい拉致された3人のキュルムの町のきぐるみ少女達がその2人組に、着てる其々のきぐるみ毎モフモフされて居たんです!



 ワタシには今のこの状況、理解出来ません! 何で踞ったまま、起き上がれずに居るんですか? 何で反撃しないんですか?



 思わず頭が真っ白になってしまったワタシ、思わず踵が後ろの木箱にガンっと。積み上げてあった気箱を引っ繰り返してしまったんです。


「誰だ、オメーは? あんっ?」


 2人にバレてしまいました! それよりも、引っ繰り返してしまった木箱の中身。何と、木箱の隙間から見えるは袋詰めにしたラバナ草の花と恐らくラバナ草と思われる白い乾燥粉末です!


「こんな大量のラバナ草、どうするつもりなんですか……アナタ達!」


「へッ、馬鹿だよなぁこのアマも。見て見ぬ振りせず首を突っ込むから死ぬん……」


 ちょっとカチンと来たので、息を大きく吸ってオーバーな位に溜め息します。


「ふぅ〜〜〜っ、もうゲンメツしました! アナタ達2人だけなら、何とか闘えます!」


 戦闘短期・・決着 ➡救助 ➡トンズラ が理想です。


「やかましい! 喰らえ、アクアウォール!」


 盗賊団『グランプス』の……もういいや、2人組の1人が水魔法を使います。ワタシの目の前に巨大な水の壁が、まるで津波の様に立ちはだかりました。



 でも、今のキレてるワタシの前では……

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