第3節. 北の漁村     ( アカリ視点 )

第061話.北の漁村で活動開始

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【あらすじ】


 キュルムの町の娘さん、北の漁村で拉致!


 ワタシとニック、長老さん達と其処へ向かうのですが……



【舞台】 スメルクト大陸


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 長老さんとお付きの従者、ワタシとニックの4人は長老さんの先導のもと、深い霧を抜けて北に在る小さな漁村に着きました。



 村の名前は……むむむっ?



 この地上界の文字の読み方をかぐら座の弾き子さん達から習いはしたものの、今のワタシではまだ読めません。


「戦術としては、二手に分かれ挟み撃ちを行う。ワシとコイツ、アカリさんとその鳥じゃ」


 長老さんは、お付きの従者を人差し指でちょんっと小突きます。


「作戦ではワシらがメイン、盗賊団『グランプス』と正面でカチ合うわい。そしてアカリさん達はサブ、背後を突き陣形を崩すと云う手筈じゃ」


 長老さんの眼から見たニックは、戦力足り得てるんでしょうか?


「じゃから、くれぐれも見つからん様にこっそり行き……まずは相手の戦力を分析するんじゃ」


 ワタシ自身ですら、ニックが単独で闘ってる所をまだ見た事が無いので、何とも……


「盗賊団の人数は何人か、使用するスキルの魔法系統、等々……総合的に判断して、組み易しと思えば闘え」


 あ、ちょっと緊張して来て。そんなワタシに長老さんはベストなタイミングを見計らって、そっと寄り添ってくれたんです。


「組みにくそうだと判断したら、退却してでもワシらと合流する事を考えるんじゃぞ。組みにくい相手と不利な状況を承知で闘うのは“蛮勇”と言って、誉められた行為では無いからの」


 ワタシとニックは、コクンと頷きます。


「それとアカリさん、どんなに窮地に陥った時でも……心は常に此処に……の」


 そして次に発したこのひと言こそ、長老さんがワタシに真摯に伝えたかった事なんです。



「決して……『野生に還る・・・・・』な」



 でもワタシ、このひと言の意味を理解するまでには至れませんでした。でも、凄く心配してくれてる事は痛い程伝わりました。


「お心遣い、有り難うございます、長老さん……では、行って来ます」



【お姉ちゃん、行きましょー!】



 長老さんはワタシとニックに頷き合うと、お付きの従者と別行動で何処かへ姿が見えなくなってしまいました。











 ワタシとニックは取り合えず、北の漁村をぷらぷら歩く事から始めてみました。


 この村には陸地に民家が、浜辺には舟を格納する母屋が、それぞれ散在してます。そして、所処舟の上で使うであろう巻き網が天日干してるのが見受けられます。



ザサッ……ザサッ……



 打ち寄せる波の音と一緒に、仄かな潮の香りも立ち込めます。


「ニック、漁村って淋しいですよね」



【ホント、寂れた村だよねー。此処だけ何だか、刻が止まってるみたいなー】



「長老さん、この村でワタシ達に何を見せたいんでしょう?」



 実は長老さんがワタシ達に見せたかったのは、この漁村の風景では無くて……



【取り合えずこの村、グルッと見て回ろーよ!】

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