第058話.定期訓練と情報交換


チュン……チュンチュン

   チュンチュン……バタタタッ



 ワタシとニック、長老さんの家でひと晩泊めさせて貰いまして。そして、翌日。



 う〜んっ、絶好調です!



 頬をむにむに、会心の笑顔。露天風呂の効果ですね……朝から実感、モチ艶ぷるぷる肌♡


 しかも此処なら、日本みたいに素顔をマスクで隠してまで “すっぴんレイプ” を心配する必要も有りません♪











 今日は年に一度開催する、定期訓練の日です。ワタシと寝ぼけ眼の まなこ ニックは、感謝の意を示す為に長老さんの所へ朝の挨拶をしに行きました。


「長老さん、お早うございます【まーす】」 ×2


「2人とも、昨日は本当に済まんかったの。昨日の夜はぐっすり……眠れたかね?」


 長老さん、返事を聞かなくても見て理解出来た様です。そう、例えるなら朝採れたてのトマトの様なフレッシュさ。


 あと夕食に出た地上界のお豆さんも美容に良いんです! 大豆イソフラボン、たっぷり充填♡


「では今日改めて、正規の手続きに則ってそなたに仕事を依頼したいんじゃがの」



【なぁーにー?】



「今日1日、定期訓練で特別教官・・・・として闘い方の手ほどきをして欲しいのじゃよ」


 長老さんのその依頼に、ワタシは暫く考えを張り巡らせた結果……承諾する代わりに、こんな条件を提示したんです。


「ワタシの『胸キュン♡流格闘術』は、力では非力な女の子がそれでも……男の子やモンスター相手に何とか渡り合える様な闘い方を、必死で編み出した答えなんです」


 そしてワタシは、くるっとターンして後ろを向きながら両腕で自分の胸を正面からクロスで抱き締めて。そのまま上半身だけを前に振り向かせ、こう言ったんです。



「なので条件として……教えるなら、ワタシと同じ女の子限定・・です! 町じゅうの女の子達に、声を掛けて来て下さい!」











 そして長老さん、そんなワタシの言葉をちゃんと守ってくれて。定期訓練の間、キュルムの町の女の子達が皆ワタシの元に来てくれました。


 でも集まってくれた女の子はたった数人、それでも折角ワタシに教えて貰いたいって集まってくれたんです。


 例えそれが1人だけだったとしても……誠意には誠意で返す。それがワタシの心意気です! 決して只の言葉に、誠意は付いて来ないんです。



 その結果……



「今までの定期訓練、オトコが中心でどうしても軍隊式になっちゃうから。女の身にはツラかったのよね」


「それに比べてこの女の子、アカリさんって云うの? 同じ女の立場だから“女の子”の事をよく知ってるし、アフターケアも万全だしね」



 口コミが新たな口コミを呼び、始めた時は数人だった女の子達が……夕方頃にはゆうに100人を越える大所帯に。


 あの、キュルムの町に女の子……こんなにも居ましたっけ? 来た当初、弾き子の皆さんが演奏した時より、多いですよね?






 ワタシがその女の子達に護身術として、胸キュン♡流格闘術 (簡単ver.) を教える代わりに。


 女の子達は休憩時間中、日陰でペチャクチャと情報交換に応じてくれたんです。



「へぇ、きぐるみって『テイムぐるみ』と『量産ぐるみ』の2種類が有るんですね」



「クェー!」

【テイムぐるみはね、実際にテイムして可愛がったテイムちゃんの魂が乗り移ってるのー】



「そしてテイム出来ない大半の人達はね、野生のモンスターから作った『量産ぐるみ』でキュルミーのマネっ子してるのよ!」


「でも、モンスターの本能を借りて・・・攻撃するって意味では“テイム”でも“量産”でも同じよ? だからきぐるみは、借りるモンスターの数だけ攻撃防御方法が存在するわ」











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 まさか後に、このきぐるみの特徴の所為でワタシが生死の境を彷徨う程、地獄を見る目に合わされるなんて……



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