第055話.2つの違うきぐるみ

 長老さん、ワタシに光り輝くモノを感じてくれたのでしょうか? ワタシが納得出来るまで、より優しく懇切丁寧に教えてくれます。


「ピント団の代表はワシ、ジョセフじゃ。此処、スメルクト大陸を足場にして5大陸全ての流通の要になっておる『巨大商業ギルド』なんじゃよ」


 へぇ、長老さんの名前はジョセフさんって云うんですね……でも、“長老さん”の方がより親しみを籠めて呼べそうです。


「ピント団の若者達は『白い巫女』様の英雄たる理由を、きぐるみの“能力”に在ると思っておる。なので、それに肖ろうと皆きぐるみを着用するんじゃ」


 長老さん、首を左右に振って言います。


「じゃが悲しいかな、彼らの着ておるきぐるみは大半が能力を欠片も使えぬ“量産ぐるみ”ばかりなのじゃよ」


 哀しいかな、永い月日の間にきぐるみは実戦闘衣から神衣カムイ崇拝の対象へ……


「本当の意味で能力を使役出来る、テイムモンスターのドロップアイテムから作られし“テイムぐるみ”を着るキュルミーは、数える程しか存在せんのじゃ……」



【ちなみに、今着てるキュイぐるみもワタシの前代のテイムちゃんが遺してくれたドロップアイテムから白い巫女様が丹精籠めて手作りしたきぐるみなんだよー!】



 そう、ニックが補足してくれました。



【つまり前代のテイムちゃんの“形見”、テイムぐるみなのは間違い無いってワケー!】











 って事は……ピント団の中でも本当の意味で能力が使える、“テイムぐるみ”を着てる人がほんの一握りしか存在しないって事ですよね?


 他の、能力が使えない量産ぐるみの人達は皆どうやってミント団に対抗してるんでしょう?



「じゃがワシも鬼では無いし、力無き女子が力の・・暴力・・に凌辱されるのを為す術も無く見るしか無いのも偲びないのじゃ」



 長老さん、うーむと暫く考え……うん!と頷き、親切心でワタシにこう提案したんです。


「毎年開催しておる定期訓練が、明日あっての。参加して、護身術を身に付けるが良いぞい。女子と云えど、自衛の手段が無いと此処では生き残れんからの」



 一方、そんな長老さんの提案をかぐら座の弾き子のお姉さん達は皆……良いの、そんな提案で?・・・・・・・・・・・とクスクスと隠し笑いしながら聞いてます。



「じゃが、それでも護身術だけではどうにも為らぬ、近付いてはならぬ処は存在するのじゃ」


 そんな現在、見た目からしかワタシを推し量れない長老さん。でも、何処までも親身です。



 ひょっとして長老さんには過去、守れなかった女の子が……? その後悔……?


 うるっ。



「例えば、この近くだと敵対勢力の中でも今一番頭を悩ませておる『メフィスト』と呼ばれる凶悪な盗賊団がそうじゃの」



 へぇ、そんな盗賊団が居るんですね。ミント団絡みなんでしょうか?



「『メフィスト』の特徴と云えばの、ハンマーをブン回すオーガを首領にして幹部格にリザードマンが2匹いるメンバー構成なんじゃが……」



 んー? ハンマー 巨鎚 ? リザードマン? 何処かで見た事があるよーな気が……



「近頃異世界から流れ着いた転移者達を、まるで奴隷の様に酷使して悪事を重ねる“フダ付きのワル”達の集団なんじゃ」



 はっ……まさか……



「今でも、幾つもの町や村を壊滅状態に追い込んでおるんじゃよ!」



【それって……お姉ちゃん!】

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