第053話.受け続ける「試し」

 長老さんは頭をポリポリ掻きながら、ワタシの問いの答えにこう応えてくれたんです。


「実はワープホール、年月と共に少しずつ緩みが生じておっての。そのお陰で、モンスター達が大量発生する問題が度々発生するんじゃよ」


 そう、スタンピード問題です。どうやら、そのワープホールという孔が原因らしいですね。


「その孔は、30年ほど前に起きたとある闘いが原因の一端でほつれたと言われておる。それが『キュルミー大戦』と呼ばれるものじゃよ」



 そう云えば母も言ってましたね、其れ……



「バトルで負かしたモンスターと主従関係を結ぶ事を“テイム”と言うんじゃが、テイムしたモンスターを駆使して闘いを挑む者達の事を『獣着師キュルミー』と呼ぶんじゃよ」


 えぇ。この地上界に降臨して直ぐ、かぐら座のお姉さん達に教えて貰いました。


「特に秀でた能力を持つキュルミーは『白い巫女』と呼ばれ、今迄も数100年から数1000年に1人地上界に降臨するんじゃが……30年ほど前に新しい『白い巫女』が降臨なさったんじゃ」


 白い巫女の話をする時の長老さんの顔、とても嬉しそうです!


「『白い巫女』様はこの大戦を勝利に導き、英雄と称される様になった。それからワシらは彼女を崇拝する様になり、この町を作ったんじゃ」


 何故でしょう、自分の事の様に嬉しくなってしまいますね。


「その時に白い巫女様が着てたのが、キュイぐるみ。世界にひとつのみ、“一点もの”のテイムぐるみなんじゃよ」



 じゃからそれを譲り受けたそなたは、間違い無く白い巫女なんじゃろう……と長老さんはワタシを認めてくれたんです。そこまでは・・・・・











「じゃがな、本当にキュイぐるみは……そなたを認めてくれておるんかの?」


 えっ、どうしてなんですか?


「最近それとは別に次々と空間のヒビが出来て新たなワープホールになっての、新たなモンスターを生み出しておるんじゃ」


「ワタシも、ワープホールにペッ!と吐き出されましたwww」


「其処じゃよ。そんなヒビ割れた不完全な・・・・・・・・・ワープホールから降臨したと聞いての……真っ先にキュイぐるみとの信頼性を疑ったのじゃ」



【長老さん、ゴメンねー! 緊急事態だったから正規のルートじゃ無く、次元の歪みから地上界へ来たのー】



 いえ、此れはニックの所為では有りません。此れからも受け続ける、「試し」なんですから。




 長老さんから、キュイぐるみから、そしてたぶん……あの“桜の木”からも。乗り越えられない試しは無い、ワタシはそう信じたいです。


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