第052話.ニックと長老さんと
キュイぐるみはワタシにとって只のファッション、活かし切れない宝の持ち腐れ……ワタシは何の力も無い、か弱い只の一般女子……
キュルムの町の長老さんから衝撃のひと言を聞かされ、凹みまくって放心状態です。ワタシ。
【あー、テステス……】
すると今まで堅く口を閉ざしてたニックが、高いトーンの声で長老さんの脳内に軽快なジャブを繰り出します。
【あのねー、このままでは余りにもお姉ちゃんが不憫なのー。なので
き、君なのか?と思わずニックと目が合う長老さん。キュイぐるみを譲り受けてニックと魂が繋がってるワタシにも、ニックの脳内会話は伝わってます。
一応調べてみました、『かぐら座』の弾き子の皆さんでテレパシースキルを持つ人は居ませんね。安心です、脳内会話し放題です。
ニックは声のトーンを低くしてシリアスに、長老さんにこう言って退けたんです。
【ハッキリ言って、潜在能力で比べたらお姉ちゃんの方が断然上だよー?】
「それは……この子の方が白い巫女様より能力値が高い、と云う事ですかな? それとも、あのお方には無い能力をこの子が有しているとでも?」
【正直言うとボクもお姉ちゃんとは出会ったばかりなのー。能力の程もまだ掴みかねてるのー。だけど、ひとつだけ分かってる事がありまーす】
脳内会話が伝わらない以上、弾き子の皆さんからはただニックが長老さんに
【お姉ちゃんは、『天界の扉』を開ける事が“出来る”お方なんでーす。長老さんならこの意味、分かりますよねー?】
「なるほど、確かにそれは大きな声では言えませんわな。その言葉の意味の重大さ……よく身に染みて分かってるつもりじゃ」
「何せ、ワシも“
この瞬間、長老さんのワタシを見る眼が少しだけ優しくなった様な気がするんですけど。長老さんの言う“あの場”とは、一体何なのでしょう?
弾き子の皆さんも、先程からひとりでブツブツ呟く長老さんを不思議な顔で眺めてます。長老さん、決して耄碌した訳では無いですからね?
でも、話に割り入るなら今です。ワタシは申し訳無さそうに、長老さんに声を掛けます。
「それで、長老さん……暫く此処を活動の拠点にさせて頂く訳には行かないでしょうか?」
それに対して長老さん、とても申し訳無さそうな顔してこう答えました。
「済まないの、今は寝床と1日2回の食事しか用意出来ないんじゃ。今、町の外から来た
その言葉に、何かを感じたワタシ。首を傾げて聞いてみたんです。
「それは一体……どういう意味なんでしょう?」
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