第2節. 長老、登場      ( アカリ視点 )

第051話.きぐるみガッカリ感

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


【あらすじ】


 アカリとニック、無事キュルムの町の住人に受け入れて貰えました。


 その時、長老さんが現れて……



【舞台】 スメルクト大陸


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼









 ワタシ達とかぐら座の皆さんがキュルムの町の人々に歓迎され溶け込む光景を微笑ましく見てたこの町の長老が、酒を持ちゆらりと此方にやって来ました。この町で作られたラム酒の様です。


「先程はどうも済みませんでしたわい、よく此の町に来る事が出来ましたなぁ!」


 あっ……この酒ボトルにも、あの掲示板で見たものと同じデザインのステッカーが貼ってありますね。


「迷い込む者が年に数人居るから、その度追い返しておるんじゃが……旅のお方の様に、この町を目指して来る者は初めてだったんじゃ。いや、2度目だったかのぉ……」


 だから皆、怖れて家の中から出て来なかったんですね……


「いえ、ワタシ達も深い霧に迷い込んでしまって……気付いたらこの町に着いてたんです」


 この町にやって来れたのは、突然起きた頭痛に導かれたから……なんて事は、この際内緒にして置きましょう。たぶん、誰も信じてくれないでしょうし。


「あの、長老さん。ひとつ聞きたい事があるのですが、何故この町の人達は皆“きぐるみ”を着てるんですか?」


「あぁ……それはな、この町に『きぐるみ信仰』、『獣着師キュルミー信仰』が根強く残っているからなのじゃ」


 あ……キュルミーについては、先程かぐら座のお姉さん達に教えて貰ったばかりです。


「“キュルミー達の町”という意味も込め、この町を『キュルムの町』と名乗っとるのじゃよ……」


 だから此の町に、『キュルム』って名を付けたんですね。











「この町は一度、後に『白い巫女』と呼ばれ英雄と讃えられたにより壊滅の危機から救って頂いているのじゃよ。その時の、あのお方の……」


 と長老さんはそこまで喋ってようやく、ワタシもガウンの下にきぐるみを着てる事に気付いたみたいです。


「ちょっ、旅のお方、ご無礼をお許しくだされ。その純白のウサギのきぐるみ、もしや……」


「あっ、このきぐるみですか……? コレは、『キュイぐるみ』って言って……」


 ワタシは、借りていた座楽団『かぐら座』のガウンをファサッと脱ぎました。


 思わず、長老は手に持ったラム酒の酒ボトルをゴトンと落としてしまいます。町の人達の視線も皆一斉に、この純白のウサギのきぐるみにくぎ付けです!


「ま、まさか……そんな……見間違うハズもない……ついに帰って来られたのじゃ……その『キュイぐるみ』を見た時にはもう……」


 長老の言葉に合わせて、町の人達が一斉に声を合わせたんです!



『お帰りなさいませ、『白い巫女』様っ!!!』 × 大勢



 ……えっ、ちょっちょっと待って!? 此処でも『白い巫女』って言葉が? そう云えばあの変な一団、サンバ・ルカも確かそんなひと言を?


 確かに今、ママから譲って貰った純白のウサギのきぐるみを着ては居るんですけど……何でこんな、大騒ぎにっ?




 ママ、教えて下さい! そもそも『白い巫女』って……一体何なんですかぁ!??




 するとワタシの異変に気付いた長老さんは、軽くワタシの手の平を両手の親指で揉み解します。モミモミ。シュッシュッ。


 そして肩を落とし、こう告げたんです。


「その『純白のウサギのきぐるみ』、全く活かされておらんの。宝の持ち腐れじゃわい」


 えっ、何が不味かったんです?


 すると、暫くの沈黙の後……町の人達が一斉に声を揃えて。手の平を返す様な、見事なまでのガッカリ感が後に残ります。



「えぇぇ~~~っっ!!!」



 ……はーいっ、そこ! そんな露骨にガッカリしなーいっ! あんまり露骨過ぎると、ワタシも傷付いちゃいますよぉ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る