第048話.アムタラ様の伝承話

 出来れば安心した顔を見せて欲しいです、でも最悪警戒したままでも構いません。どうにかしてキュルムの町の人々を、関心で家から外に引っ張り出せるのでしたら。


 どうにかして町の人々と交流を持てないかな、と今までジ……ッと考え事してたリーダーのお姉さん。


 すると妙案が浮かんだのか、いきなりカラカラ笑い出したではありませんか!


「あはははは……そうだ、イイ事を思い付いたですわ」


 そう言ったお姉さんの妙案こそ……正に座楽団『かぐら座』でしか解決出来ないだったんです!


「この中央の広場で、座りながら楽器でジャラジャラ音を鳴らしちゃいましょう!」


 ……へっ!? お姉さんのいきなりの提案に、ワタシもニックもビックリです! ニックに至っては両眼が大きく嘴パッカリ、翼をバサッと広げたままカーン!と固まってます。


「えっ……ちょっと待って! 何をなさる気なんですか……?」











「ねぇ旅のお方、この地には『アムタラのお話』って伝承話が有ってね……このお話、聞いてみたくは無いです?」


「……?」


 ワタシ、ムムムと首を傾げます。すると4人の“弾き子”の皆さん、ワタシの方を向いて順番にひとつの昔話を語ってくれたんです。



「これは私達が祖父の世代から伝え聞いてた……昔むかしの大昔、まだ全ての種族がひとつの世界で仲良く暮らしてた時のお話ですわ」


「【アムタラ】っていう、着た女神さまが居たそうなんですの。生きとし生ける者は全て、アムタラ様を“太陽の女神さま”と崇め祀ったそうですわ」


「でも、アムタラ様は妹君の【シノヰ】って乱暴者の破壊神さまに虐められ、大層怖がってたそうですの」


「余りに乱暴を働くので、とうとう居ても立っても居られなくなったアムタラ様は洞穴に隠れ“天界の扉”と呼ばれる大きな岩で蓋をして……」



と呼ばれる、もうひとつの新しい世界を創ってしまわれたそうですわ』×4



 え、“天界”ですって? まさか地上界に来て、早々に最初の町でその名前を聞くなんて……! それとも、5大陸を股に駆ける渡りの座楽団『かぐら座』だからこそ知ってるんでしょうか?











 すると、今度は弾き子の3人が続きを語ります。それは始まりの、リーダーのお姉さんが弾く静かな曲調に乗せて。



「“太陽の女神さま”が隠れてしまった所為で何時までも世界は真っ暗闇なままになってしまい、地上界の人々は困り果ててしまったそうなんです」


「シノヰ様はアムタラ様が居ないのを良い事に、漆黒の暗闇を使ってこの世界に君臨なさろうとしたんです」


「そこで、地上界で仲良く暮らしていた7つの種族をそれぞれ治める長老達が一堂に集い、協力し合ったそうなんですわ……」



 そう言い、語りを終えた弾き子さんからひとりずつ……リーダーのお姉さんの曲調の波に自ら加わり、溶け込んで行きます。


 静かな、それでいて滑らかな音……その内、弾く音が2つになって絡まり合います。そして、3つの音で曲調がいきなり変わります。


 最後に、4つの音が高め合う……! それは不完全を皆で補い合って「完全」にして行く様な、まるで楽器を使った重厚な『起承転結』だったんです。











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【う・ん・ち・く♡】口伝承話



 アムタラ様のお話……少し変わった、でも何処か懐かしさを感じるノスタルジックな 物語。


 伝承話は口伝ゆえ世界各地で似た話が広がり、それは異世界の地でも同じです。


 ひょっとして、ワタシがゴブリンと接触する遥か以前に、別の異世界の住人が地球の文化と接触してるかも知れませんね。


 実は居るんです、既に地球の文化と接触してる異世界の住人が。しかも、その長たる “7世界の” の中のひとりがね……



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