第047話.キュルムの町に潜入
その後暫く、ワタシ達は引き続き濃霧の中を彷徨います。お姉さん達にも、遥か上空からのぶつかり音は聞こえてます。
「濃霧のせいか、ちょっと寒いですね……」
「じゃ、座楽団『かぐら座』のガウン有るから羽織らせてあげるよ……」
リーダーのお姉さんは、ワタシにガウンを貸してくれました。これで寒さは凌げそうです。
「一体、どちらに向かい歩けば良いのでしょう」
何処を見渡しても白、白、白。リーダーのお姉さんも困り顔ですね。すると……
「たぶん、あっちの方向かも」
ワタシは、スッとある方向に指を向けます。
「あの方向に向かって歩くと、頭痛が楽になりますから……次はこっち……何か、誰かに呼ばれてる様な気がしますね……」
ワタシの“頭痛ナビ”通りに進む事、かれこれ数時間。すると、遠くにボヤ……と町らしき輪郭が見えて来ました。
「あっ、町が見えて来ました!」
「えっ……? 私達も座楽団として色んな町を渡り歩いて来ましたけど、こんな所に町なんて見た事も聞いた事も無いですわ!」
暫く歩くと、無事に町の入口に着いたんです。
「本当に、幻じゃなくて町だったんですね。来れちゃいましたよ」
「クェ……」
【お姉ちゃん、本当に入って大丈夫なのー?】
ニック、すごく心配そうです。
「ワタシは頭痛のお導きを……信じます。取り合えず中に入ってみましょうよ」
この子のお陰で、この町に来れたんだから……この子が大丈夫と言うのなら。
弾き子の皆さんはコクンと頷き合い、ワタシ達は町の中に入る事にしたんです。
町の中、整然として居て。そして真ん中に大通りが2本、十字に走ります。2本の大通りが十字に交わった中央は、丸い円形の広場になってます。
広場の真ん中には掲示板が設けられており、そこにピンクの兎ステッカーが貼られてます。それだけで無く、一緒にヤシの木も植えられてます。
そして、ヤシの木には何かの樹木を輪切りにした木の板が打ち付けられており、表面の年輪には何かの文字が彫られてる様です。
「ふーん……どうやら『キュルム』って彫られてるみたいね……どうやらココ、キュルムの町らしいよ」
リーダーのお姉さんが教えてくれました。ワタシは今現在この地上界の言葉は分かるのですが、まだ文字が読めないんです。
この2本の大通りに平行に、まるで定規で線を引いたみたいに等間隔で家が配置されてます。周りを見廻し、リーダーのお姉さんが言いました。
「どうやら、人っこひとり居ないみたいですわ」
アカリは、フルフルと首を横に振ります。
「……いえ、そんな事は無いと思いますよ。だって、人の姿が見えないだけで先程から人の視線はそこかしこから感じてますから。たぶん、家の中からワタシ達の事を覗いてるんだと思うんです」
「クェクェ~ッ!」
【冴えてるよ、お姉ちゃんっ!】
どうやらニックも、その考えには同意見の様です。でも、なぜ人々は顔を出してくれないんでしょう? やっぱり、この町は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます