第046話.惜しい坂道ニアミス
現在、ワタシとニックと『かぐら座』の“弾き子”の皆さん、合計6人の大所帯は森を抜けて平原の緩い上り坂を進みます。
「さぁ、お日さまが顔を出している内に距離を稼いじゃいましょう!」
そう言いながら、先程見た事を思い出します。目から入った情報だけを、全面的に鵜呑みしては駄目なんです。
きっと、転んでも只では起きませんよ? だから、見方を改めましょう。只のおバカでは無いんです! スゴク老獪なんですよ、あの人達は!
この先で上り坂と下り坂に分かれる緩い坂道、よく見ると遥か向こうでもう一度ひとつに交わるみたいですね。
予定では、まだ明るい内に行ける所まで一気に行っちゃうつもりだったんです。
でも、全てがスムーズに行く程そんなに考えは甘く無かった様です。何故なら、歩き続けるに従ってだんだんと霧が立ち込めて来たからです。
「折角
……ズキッ!
霧が立ち込めて来た時、ワタシは頭痛で少しだけくらくらっとします。でも、倒れる程では無いんですけどね。
それでも手探りで進む中、何とか上り坂を選択出来たみたいです。気持ち、霧が薄くなって来ましたから。
「あ、あそこにも人影が。あれって……」
そう……下り坂を選択したらしい、あのクセがスゴい一団『サンバ・ルカ』が突然の霧で一寸先も見えず右往左往してたんです。
それに加えてこちら、上り坂から辛うじて向こうが見下ろせますが……どうやら向こう、下り坂ではワタシ達の事を全く認識出来ない様です。
その理由は此処が下に降りる程霧が溜まる地形の所為で、一寸先ですら既に真っ白で何も見えないから。ホワイトアウトという現象です。
ゴゴンゴゴン……
ゴゴンゴゴン……
さらに頭の上遥か上空から、何かが激しくぶつかる音が響きます。一体、この場所では何が起こってるんでしょうか?
「ん~っ、『サンバ・ルカ』!!!」
シャキィィィンッ……!
でも、例えホワイトアウトだろうとこの人達は『通常業務』と毎日のお仕事の依頼確認が欠かせません。声だけ聞こえて来ます、本当にブレないですね~。
【絶対に『筋肉は裏切らない!』って言ってそーなタイプだよねー♡】
ワタシは人差し指を立てて、シーッとみんなに沈黙を守らせます。
「今日の仕事は『白い巫女』の捜索、分かってるなっ! 裏方班の連絡では“濃霧の向こうにその姿を見た”って報告だ!」
この霧の中、結果的にワタシ達は上り坂に辿り着けて。あの人達は下り坂に押し込まれました。本当にツキの無い残念さんですね。
「濃霧が頻繁に立ち込めるエリアと言えばココだ、この辺を徹底的に探索するぞ!」
なのに何で……レッドから毎回毎回、あんなに説教を喰らってるんでしょうか?
「レッド、突然の霧でホワイトアウトしちゃったよぉ♪ この霧じゃあ、捜索対象者の姿なんて完全に分からないんじゃないのかい?」
グリーンは両手を上に掲げ、完全にお手上げポーズです。しかし彼の場合、本気で困ってる訳では有りません。
早く打開策を考えろ、と暗に催促してるんです。
「レッド、前回の『メフィスト』の件でも今回の探索の件でもそうなんだが……何か最近、後手後手に廻らされてるんじゃ無ぇか?
ブルーは、“目に見えない何か”の思惑に振り回されておかんむりですね。でも歯ぎしりする程悔しい、という感情でも有りません。
その証拠に、この濃霧の中でも探索を止めるつもりは無さそうです。何だかんだ言っても、ちゃんと信頼関係を築けてるでは無いですか……裏方班と。
でも、色んな意味でニアミスしてますよね。惜しいです……サンバ・ルカ。でも、何であの一団は『白い巫女』なんて探してるんでしょうか?
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