第045話.只では転ばない様で
一方、彼らと茂みを隔てた向こうでは……ニックが地面の枝を踏まない様に、空中でぐるぐると器用に回転してます。
ヒーヒー、ヒーヒー!
ニック、笑い転げてます。上下左右、自在に。まるで宇宙遊泳みたい。よほど、この『サンバ・ルカ』がツボにハマったんでしょうか?
数刻後……また少し間を置き、彼らの様子をもう一度覗いてみます。
あ、レッドが夕日に向かい何かを叫んでます!
「おとーさん、頑張ってるぞー♡!」
どうやらレッド、妻子持ちの熱血漢みたいですね。語尾に♡を付けてるって事は、子供はたぶん娘さんなんでしょうか?
その光景をウンウンと温かく身守るブルーは、レッドみたいな愛に溢れた家庭を夢見る婚活男子では無いかと思われます。
逆にそれを冷めた目で見るグリーン。幼少の頃から両親の愛情を知らず育ったのか、物事の事象を常に斜め下からしか見れなさそうですね。
ただ今『サンバ・ルカ』の一員として、レッドの元で人のココロを勉強中……って所なのでしょうか?
暫くすると全員で輪を囲み、律儀に反省会をし始めたんです。
当然議題に上がるのは、来た時にはもうすでに全滅してた盗賊団『メフィスト』の事かと思ったら……何と、最後のキメ台詞後の演出の時の緑の爆薬の量だったんです!
「マジでありゃあ、死ぬぞ……」
「すいませんっ、爆薬の配分量を間違えましたっ!」
裏方班が、レッドにガミガミ怒られてる様です。何故なんでしょうか?
「いいか、『サンバ・ルカ』はフリーの冒険者チームなんだ。言わば、雇い主から要請が有った時だけ裏活動部隊として契約してるんだよ」
どうやら、裏方班との息がまだ合ってないみたいですね。
「そして、『サンバ・ルカ』はオレ達“現場班”とお前達“裏方班”が揃ってこそのチームなんだ。互いに息の合った連携が上手く取れねぇと、他のヤツらに仕事をみ~んな持ってかれちまうんだ! 肝に銘じておけ!」
そしてこれから言う事だけは決して忘れるな、と拳を振り上げて力説します。
「それに、この爆破シーンは言わば雇い主への『存在感アピール』なんだ! オレ達みたいなフリーのハンターチームはな、他にごまんと居るんだぞ!」
レッド、アツいです! アツ過ぎです!
「だからアピールに手を抜いてたら……仕事がキッチリ出来るだけじゃあ、他のヤツらに出し抜かれちまうんだ!」
「だからフリーのハンターチームって、何処も
プププ……ククク……
辺りから、失笑が漏れます。
「だから裏方班、他の仕事も大切だが爆破シーン
何やら、色々と檄が飛んでる様です。コンビネーション抜群なこのクセがスゴい一団、一体何者なんでしょうか……?
でもワタシ達、何時までも此処に逗まる訳に行かなくて。名残惜しいけど、茂みから離れます。
【もーちょっと、見たーいー!】
それでも飛んで戻れるから、とニックが齧り付くので。お姉さん達をその場から離して、ワタシとニックだけその後を見届けます。
そんなワタシ達が目撃したのは……ひと通り檄を飛ばし終え、用を足しに裏側に廻ったレッドの姿です。
ジョロロロロロ……
「ちぇ、面白い見せもん披露してやれば尻尾を出すかと思ったのにな。思ったより、身持ち堅いんじゃ無えか?」
しっしっしっ……ふぅ。
「バレてないと思ってんじゃ無ぇか? もうちょい泳がしてみるか、あの
……!??
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