第041話.座楽団 『かぐら座』
まず、町娘さん達が全員でワタシに感謝の意を伝えます。
「改めて、言わせて欲しいですの……先程は助けて頂き、本当に有難うございました」
そして町娘さん達4人の内の1人が、落ち着いた口調でこう自己紹介したんです。
「私達は、『かぐら座』って座楽団の“弾き子”をしてる者ですわ」
あっ、そう云う事ですか……この人は4人の中でも一番年長者で、皆この人の喋りに口裏を合わせてますね。
「『かぐら座』は、町から町へと渡り歩いて音楽を弾いたり踊ったりしてる小さな座楽団ですの」
つまり
「でも、演奏する時以外は私達“弾き子”のグループともう1つの“踊り子”のグループに分かれ移動するんですよ」
確かにワタシが元居た世界では、各国要人は必ずどちらの人間に不測の事態が起きても国を動かし続けられる様に……
「2つに分けて移動する事で、例えば今回の誘拐みたいな不測の事態が起きてもリスクを最小限に抑える事が出来るんですわ」
日本だったら総理大臣と副総理大臣、アメリカだったら大統領と副大統領は別々のジェットに乗って移動してる、って聞いた事があります。
たぶん、それと同じ事なんでしょうか?
「なので助けて頂いても、お礼として差し上げられる物が何も無いんですの……」
「別に、お礼は良いですよ……それより聞きたい事が有るんです。アナタ方座楽団、確か“町から町へと渡り歩いてる”って仰ってましたよね?」
“弾き子”のグループは皆さん、コクコクと頷いてます。
「実はこの世界に来たばかりで、これから先どちらに向かって歩けば良いか分からないんです」
ニックもつぶらな瞳で、ちょっと首を傾げる必殺のポーズで援護射撃します。
「ね、可愛いお姉さま方っ♪ 此処から一番最寄りの町だけで良いので、教えてくれませんか?」
にっこーってお日さまスマイルするワタシの口から発せられる、『可愛い』発言。“弾き子”のグループは皆さん、堪らないみたいですね。
お姉さん達の中には、キュン♡死してる人もいるみたいで……
「もぉっ、しょうがないですわねぇ♪」
ちなみに、日本ではお店の店番をしている看板娘のお姉さんにこのおべっかを使うと、量とか少しおまけしてくれたものです。
日本だろうとこの異世界だろうと、キラーワードとしてこのおべっかは場所を問わず十分に機能を果たしてくれるハズなんです。
すると、“弾き子”のグループのリーダーのお姉さんが耳朶まで真っ赤にしながら、ワタシの耳元で囁く様にこう言ったんです。
「この世界に来たばかり、という事は……すみません、旅のお方はもしかして『転移者』の方なのですか?」
「まぁ、ココだとそういう事になりますかね……あまり声を大にして言えないんですが」
「クェ……」
心配そうにひと声鳴いて、ニックはワタシに目配せを送ります。
【余り他人に、秘密をベラベラ喋らないでー!】
「大丈夫ですよ。私達は町から町へと渡り歩く座楽団、それはもう色んな国と地域に行っていますわ。行った町で、『転移者』の方や『転生者』の方と会う事も度々有るものですから……」
成程、だからこの異世界の住人の皆さんはいきなりワタシみたいな人間と出会っても“拒絶感“が無かったんですね。
「全ての種族を等しく愛する女神さまの恩恵を受けてる此の世界、『転移者』や『転生者』の方も保護対象になるんですの」
まぁ、確かにこちらの異世界に迷い込んだばかりの人間でしたら……半日でも無事ではいられないでしょうから。
「あっ、そうだ、良い物があるから見せてあげますわ……」
すると、リーダーのお姉さんから、こんなお誘いが! 見せてくれる良い物って一体、何なんでしょう……?
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