第039話.メリ込む靴、顔面に

 残った1人、窃盗団の親分は喚き散らします。


「何だぁ、お前は? どっから湧いて出やがったんだ?」


 いえ、空から降って来たんですけど……


「お前、まさかこの町娘を取り返しに来たのかぁ? ……渡せねぇなぁ! 何故ならコイツらは高い金ヅルになる “どれ……” 」



メキョ……



 次の瞬間、周りの景色がスローになって親分の顔面にワタシのブーツがメリ込みました。


「それから先のセリフ、絶対に言わせません!」


 キッと親分を睨んで、ワタシは言い放ちます。怒りの所為でしょうか、ワタシの目……絶対、三角に吊り上がってますよぉ……手鏡見るの、コワイですwww



「しかもオレの自慢のペットだったガーゴイル、黒いヒビに吸い込まれたまま帰って来ねえしよ……」


 あのガーゴイルを日本に送った張本人は、アナタだったんですか……! アナタのお陰で、ワタシも母も……言質は取れました、遠慮無く……



メキョ……



「いってぇ~!この小娘、オレの顔面に2度もケリ入れやがってぇ! おっ父にもおっ母にも、たれた事無いのに……」


 親分は見た目がゴツい、腕っぷしの強そうなオーガなのですが……よく見ると、親分の顔面にキュイぐるみのブーツの“残念な”靴裏がくっきりと赤く残ってます。











 ニコッと怖い笑みを浮かべてブーツをメリ込ませるワタシに、親分は一番言ってはイケナイひと言を思わず発してしまったんです!


「ば……バケモンが……っ!」


 次の瞬間、どこからともなくカチン!という音が……


「はぁ? 女の子に向かって……“バケモン”ですってぇ!!?」


 背後がゴゴゴ……と怒りの炎で燃え盛ります。どうやらそのひと言が、完全にワタシの『逆鱗』に触れてしまったんです!


「ええいっ、こうなりゃヤケだ! コレでも喰らえっ!」


 親分はそう言い、手に持つ巨鎚にモノを言わせて上から振り下ろしスタンプ攻撃をカマします!


「顎クイ♡からの……!」


 ワタシは身構え溜めを作ったまま巨鎚の軌道をギリギリで避け、カウンター気味に親分の顎に掌底突きの顎クイ♡をクリーンヒットさせました!


 この場面での顎クイ♡は、ただ親分の動きを止める為だけのモノではありません。何と、渾身の顎クイ♡で親分の身体を地面から引っこ抜く為のモノだったんです!



ガキッ……!



「……爆走ホールド!!」


 そして、少し親分を宙に浮かせた状態で素早く親分の腕を取り……


「お空の彼方まで飛んでいけーっ! バックハグ♡!!!」


 ワタシは腕をキメながら、弧を描く様にクルッと回って遠心力を乗せた一本背負いをして大空にブン投げました!


 すると巨体がぶっ飛んで脳天が地面に突き刺さり、頭から血を流して気を失ってしまいました。


「盗賊団『メフィスト』、一網打尽です!」



【いぇーいっ!】



 ワタシは、ニックと手と翼をタッチして喜び合いました。


 バックハグ♡は単独技では無く、ボクシングのデンプシーロールみたいに連携に組み込み初めて活きる技である事を学習したワタシなのでした。


 でも、それだけではまだ完成度50%のままなんですけどね♪











 ……それを、巨木の洞で縮こまっている町娘の皆さんがポカーンとしながら見てます。


「さぁお姉さん達、逃げるなら今ですよ!」


 ワタシは、町娘の皆さんを全員森から逃がしたのでした。











✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



 無事に異世界へと降臨する事が出来たワタシ、朱璃……此処ではアカリですね。


 本当に来れるなんて、まだ夢心地。実感が湧きませんよ。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

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