第1章.妖精王

 第0節. プロローグ  ( 朱璃視点 )

第037話.第1異世界人、発見

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


【あらすじ】


 “次元の歪み”を通って異世界へとやって来た、ワタシとニック。


 其処で最初に出会った異世界の第1住人・・・・は、盗賊達です。軽い肩慣らしと異世界の平和の為に、早速手合わせ願いましょう!



【舞台】 異世界 ( 地上界 )


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼









 少し斜め上の方の上空に出現した“黒い瘴気が滲み出るヒビ”から、ワタシは女の子座りのまま吐き出されて。



……んぺっ!



 此処は『地上界』と呼ばれる、日本とは違う異世界。2人とも空中に、ニックはくるくると横回転してます。



【あそこ見て、お姉ちゃん!】



 陰気に包まれた森の向こう、何やらゴソゴソ動く人影が在ります。どうやら、盗賊団の輩達みたいですね。


 森と麻の群生地が同居する中、まるでマングローブの木の根元みたいな木のうろに押し込められてるのは……どうやら町娘の皆さんの様です。


 この近くに、町が在るんでしょうか? いえいえ、其れよりも盗賊団が町娘を捕まえてどうするんでしょう?


「ニックさん、無事に“次元の歪み”を抜ける事が出来たみたいですね!」



【お姉ちゃん、この異世界では“次元の歪み”の事を『ワープホール』って言うのー!】



 どうやら人数は盗賊団が5人、町娘の皆さんが4人ですね。計画通り町娘を拉致した「勝利の美酒」で全員酒を煽っておりベロンベロンです。


 酒徳利をガンガン叩いて盛り上がってたへべれけな盗賊団、用を足しに千鳥足のまま5人揃い草むらへ向かう様ですね。



シャーッ……



「ん、何か夜空がキラリ光ったよーな……流れ星かな? うぃー、ひっく」



 呑気に夜空を見上げた5人組。暫くすると、その正体が判明して。きぐるみを着た美少女ワタシが飛び込んで来たんです!



浴びせ倒し……?

  フライングボディープレス……?











 思わず5人の盗賊団は皆、ゴロンと揉んどり打ちます。



【お姉ちゃん、群生してるスメルクト麻・・・・・・がクッションになってくれたねー。もー異世界に来ちゃってるから、“アカリ”って名乗っちゃいなよー!】



「その方が良いかも、ですね」


 盗賊団の人達をガン無視して、ワタシ達は2人だけの世界で盛り上がります。


「あ?……なんだぁオメェはぁ?」


「アレが黒い瘴気のヒビを通って、どっかに飛んで行ったと思ったら。今度は、小娘が落ちて来たぜぇ?」


 今度は、盗賊団の方が何故かニックだけガン無視します。ワタシ、朱璃……此処ではアカリでしたね、だけ商品価値があると値踏みしたのでしょうか?


「この小娘も、オレ達がかっ拐っちまうかぁ?」


「構わねぇよなぁ!」


 盗賊たちに好き放題言われ、ワタシはカチンと来ました。


「アナタ達、ワタシを“かっ拐っちまおう”ってどういう了見ですか!」


「だってオレ達、泣く子も黙る盗賊団『メフィスト』なんだから。当たり前じゃん……」



ひゅうぅぅぅ~



 うん、当たり前の返答ですね。確かに場もシラけますよ。此れにはワタシも、顔を真っ赤にしながら……


「あ、アナタ達をクッションにしたワタシも悪いですけど……ふ、不可抗力ですから、コレ!」


 ニックも、ぷうっとふくれっ面です。笛吹ケトルみたいに、頭からピーッピーッと湯気が立ってます!



【ねーねー、お姉ちゃんもそこの人達もそーなんだけどさー。ボクだけ蚊帳の外なの、どーしてよー?】



 このグダグダなやり取りに、黙って聞いていた盗賊団の親分もついに……


「えぇぃっ、問答無用だぁっ! みんなぁ、やっちまえっ!」


 ……『情けは無用』って事ですか。でも若干1名、気になるセリフ・・・・・・・を言ってた人が居ましたね。その人は一番最後に、と……




 それに、この窃盗団の人達は……弱い! 先程ガーゴイルとの熾烈な闘いを生き残った事が、ワタシにとって大きな自信に繋がってるんですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る