第036話.娘との別れ、そして
私、ガーゴイルの核を破壊し終わり朱璃の元へ駆け付けたわ。でも、あるモノを見た途端に先程までの余裕が消え去ってしまったの。
「朱璃、あれって……」
「ママ、さっきガーゴイルの破壊光線が黒い気の滲み出てる渦ごと水面を真っ二つにスプラッシュした時ね……」
朱璃、その場にへたり込んだの。何故なら次元の歪みが、心桃湖の水面で最初に見た時はあんなに広がってたのに……
「あの“次元の歪み”も、影響を受けちゃったみたいなんです」
今や、半分位にまで縮まってたからなのよ。
でも私はそれを見るなり、考えるより先に身体が動いたわ。まず私はニックを、くいくいと手のひらで呼んで。
「ニック、ポケットを! 此れを持ってて」
私の呼び掛けに応じて、ニックは体躯の表面にフォン!っと小さな異次元の渦を発生させたの。何か渦から木の杭が見えるわね。
「それ、さっき見たプラカードじゃ無いですか♪ そんな所から出し入れしてたんですね!」
そんな朱璃の気付きを他所に、私はポケットに
そして、私は湖に近付けるだけ近付いて。でも次元の歪みは水面に在るので、此処からじゃ直接触りには行けなくて。
だから湖畔から、両手に込めた全ての霊力で次元の歪みの切れ目を広げようと試みたの!
「落ち込んでるヒマは無いわ、朱璃! ニックのホバリングに掴まって、真下の“次元の歪み”に飛び込みなさい!」
私の霊力の限界に挑戦よ、しかも此処からでは水面と平行だから直視出来ないしね! でもそのお陰で、“次元の歪み”は少し大きさが戻ったの。
「異世界に行きなさい! ふぅふぅ、パパを……追いかけたかったんでしょっ?」
「でも、そんな事をしたらママが……」
「先程も言ったよね、朱璃がゴブリンと闘うのを
あんなヤツらに負けはしないわ♡って私、朱璃にウィンクしてみせたのよ。
「それに、きっかけが朱璃じゃ無くても……どのみち異世界への扉は遅かれ早かれ、開かれる事にはなってたと思うのよ」
だってガーゴイルの眼が赤く、操られて……即ち、此方の世界に其れを
そして、次元の歪みに目配せしたの。
「そうなれば、コレも沢山出現するわ! 同じ目的で押し込まれるモンスターなら、恐らくどの“次元の歪み”に飛び込んでも同じ異世界に辿り着く筈なのよ!」
でも、この時……私はひとつ、朱璃に敢えて言わなかった事が有るの。
確かにどの“次元の歪み”に飛び込んでも同じ異世界に辿り着くけど、着地点がバラバラになる可能性が有るって事をね。
「あと、私からひとつだけアドバイスするわね。異世界で日本名は通用しないから、より響きで伝わり易い
そして私は、ニックに朱璃を託したの。
「ねぇニック、私の霊力はもうすぐ限界だから。コレから先はニック、お願い……私が駆け付ける迄、朱璃の事をお願いね」
【キョウコ様、分かったよー。さ、お姉ちゃん、行こー!】
「ママ、後で必ず合流しましょうね! 向こうの異世界で、待ってますから!」
そして朱璃はニックに掴まって浮き、次元の歪みに飛び込んだのよ……
《 第1章 Fin 》
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2人が飛び込み暫くすると次元の歪みは縮んで行き、消滅してしまったわ。見届けた私は、バチッと弾かれゴロンと揉んどり打ったの。
「とても条件厳しいけど、私にも有るのよ?……朱璃みたいな
ポゥっと仄かに輝きを放つ、私の両手の平。此れ、霊気の光では無さそう? 手の平をグッと握り、天に突き上げたの!
「こー見えても『白い巫女』の私、“まだまだ現役”なんだからねっ!!!」ふんすっ。
自分の最低限の責任を全てやり遂げた私、ヨロヨロと力なく立ち上がったわ。すると、それと同時に林の奥からとある人影が。
「あ、貴女は……」
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