第026話.あのヒヨドリの様に


コロロ……

   コロロコロコロ……



 家の周りから聞こえて来るこの鳴き声は、アマガエルにそっくりな「シュレーゲルアオガエル」ですね。


 澄んだ、キレイな合唱を聞かせてくれます。ココロが疲れた時に癒やしてくれる、ワタシの好きな鳴き声です。











 ニックはママと顔を見合わせながら、分かり易い様に言葉を噛み砕いて説明を続けます。



【お姉ちゃんはね、異世界を統治する7人の王さ・・・・・全員探し出して、“力の譲渡”を王さま達全てから受けなくちゃならないのー】



 ニックは翼をバサバサ羽ばたかせながら、慌てて言葉を補足します。



【でも、素直に“力の譲渡”に応じる王さまばかりじゃ無いよー。中には、力ずくで屈服させて応じさせなくちゃイケナイ王さまだってー】



 そして、とびきりのキメ顔で。



【どの王さまから順番に廻るか、運の要素も大事ねー♪】



「朱璃、私からもひとつアドバイスよ。そのキュイぐるみ、これから異世界を渡り歩くアナタの助けになってくれるわ」


 このきぐるみは、過酷であろう異世界でも娘のワタシを護ってあげたいって云うママの愛情が一杯詰まったプレゼントです。


「でも飽く迄それは、“羽織ってる時” だけなの。キュイぐるみを脱ぐと、弱い生身の人間とほぼ変わらなくなるからね」


 えーっ、そうなんですかぁ!?? でも物事のメリットだけで無く、リスクもちゃんと説明してくれるママ。


「だから最初は慣れないかもだけど、夜寝る時もキュイぐるみがパジャマ替わりになる位まで肌身放しちゃ駄目よ!」


 甘やかすだけじゃ無い、ママの愛のムチ。でも親子の絆って、こう云う事の積み重ねで生まれるんでしょうね。











「ニック、“力の譲渡”って具体的には何をするんでしょう?」



【うーん、色んな種族の出身者が様々な用事で王さま達に謁見を願い出るんだけど、実際に謁見出来た者は稀なのー】



 薄々勘付いては居たんですけど、実際に会おうとした人って過去にも居て。何もワタシだけでは無いんですね。



【しかも王さま達は、謁見が叶った者に“力の譲渡”をするんだけどー、その度に譲渡されるモノが全然違うのよー】



「たぶん、どの王さまも一筋縄じゃ行かないと思うわ。でも、忘れないで。どんな時だって……朱璃は決して、ひとりきりじゃ無いからね」


 ワタシ、王さま達に会って……一体、何を受け取る事になるんでしょう?






「朱璃がこれから向かい合ってくのは、どんな運命なのか。私も行ける限界まで、朱璃に付き添ってあげたいの。でも、そこから先は……ね」


 ママの愛は、ほんのり温かくて。ワタシの成長をいつも一番身近で見届けてくれます。



 そして、そこから先・・・・・……ママは、ワタシが独り立ちする事も願ってるんです。そう、まるで巣から飛び立つあの桜鳥の ヒヨドリ 様に。



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