第024話.両親の愛情の集大成
全てを認めちゃうと、ワタシの中のアイデンティティーが音立てて崩れ去り……自分が自分で無くなりそうで、とても怖いんです。
だって全ての行動原理に、“人間”としての自分が居るんですから。でも本音は全て認めて、今直ぐにでもパパを探しに行きたいです。
ワタシ、そんな葛藤に苦しみます。それに今は思春期、特に感情が揺れ動き易いんです。
「朱璃、確かにこの世界では荒唐無稽なお話よね。でもね……『異世界』っていう、この世界での常識が通用しない世界も確かに存在するの。アナタも散々見て来たでしょ、ゴブリンみたいな普通の人には
ママ、知ってたんですね。ワタシが2度に渡りゴブリンと接触してた事を。
「それにもっと決定的な証拠が欲しければ、そこでキューってノビてる子が居るじゃない……?」
ママが指す指の先を見てみると、ナルト目になってるニックの姿が。確かに、ニックはフェアリーバード……この世に存在しない生き物です。
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朱璃、アナタはそんな事位で自分自身を見失う様な、意志の弱い女の子じゃないわ……
さぁ……私がもうひと押し、背中をポンと押してあげるからね。
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「朱璃……アナタが知りたがってる答えは、たぶんパパが知ってるハズよ。だってパパも、アナタと同じ“半人半神”の存在から大天使になったんですもの」
ママはその流れから、ワタシを後ろから優しく抱き締めて言いました。
「朱璃、パパを探しに行きなさい。その為のサポートとして、私も手伝ってあげるから。朱璃……パパに会いたいんでしょ?」
ワタシはもう限界でした。これ以上、自分のココロにウソは付けません。ワタシは、涙をポロボロ流しながら。
「ワタシ、パパに会いたいよぉ……他の子達には父親が居て羨ましくて……ワタシにもパパが居てくれたのが嬉しくて……パパにひと目会って、抱き締めて貰いたいんです……」
そんな号泣するワタシの肩越しに、ママは両腕を背中に廻して。少しぴくっと躊躇しますが、笑顔を浮かべて優しく抱き締めます。
「もう……分かってたわよ、朱璃。最初からずっとね。だから、キュイぐるみも、ニックも、全てアナタに託したんじゃない。朱璃……アナタは私の自慢の娘よ」
ワタシの背中を抱き締めて、ママは確信します。何時までも、守られるだけの少女では無いって事を。
「朱璃、アナタの潜在能力はかつて『白い巫女』と呼ばれた私の全盛期を遥かに凌駕するモノになるハズなのよ」
ママ、今……『白い巫女』って?
「それは追々、来るべき刻が来たら教えてあげるわよ」
それにしてもママは知ってたんですね、実は。ワタシがママに内緒で異世界の住人達と闘う為の
「私とパパの力で朱璃、アナタの本当の能力を覚醒めさせるキッカケを作ってあげるわ!」
ただピンクゴールドの帯を使い熟す為に闇雲にトレーニングを積むのと、ピンクゴールドの帯の本質を肌で知るのは意味合いが全然違います。
「ふぅ……後はアナタ次第よ、朱璃」
ワタシはピンと来てませんが、この瞬間……図らずも異世界へ行く為に必要な
そのひとつは『資格』、このパパとママから貰った愛のバトンタッチ、そして異世界へ行く為の明確な理由付けです。
そしてもうひとつは『準備』、ココロの中の桜の大樹に会いに行く際のドレスコードこそ、このキュイぐるみだったんです。
「そして、その能力をアナタに身に付けさせる事こそ……魔物に襲われる確率が高いアナタの為、『譲渡の儀式』を急がせた本当の理由なの!」
ママはうんっと力強く頷き、確信を以てこのひと言を口にしたんです。
「これからも路に迷った時は、自分のココロに従うのよ。この能力が、きっとアナタをパパの許へ導いてくれるわ」
そんなママからワタシは、この上なく心強いエールを貰えたんです。
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