第015話.自慢のママなんです

 そんなニックの身の上話を聞きながら、ママはせっせとある作業も同時進行で進めてます。ワタシが帰宅するかなり前から続けてる様ですね。


 ニックも、別の作業の片手間で聞いてるしー!なんてママを怒ったりしません。


 人間の女の子みたい・・・・・・にココロの中に既に答えが用意されて居て、ただ聞くだけに徹しその答えを肯定してくれるママが嬉しいんでしょうか?


「ふぅ、あらかた終わったわ。後は、仕上げにこの中に“魂”を籠めるだけね……」


 ママはワタシに見えない角度から、完成した『何か』を小型の箱、アタッシュケースに詰め込んで。


 そして、瞳を閉じ念じながら厳重にロックをかけたんです。その両手からは、何やら青白くて淡い光が漏れ出ており……


 どうやら、普通のアタッシュケースでは無さそうですね。“魂”を籠めるとか、何か物騒なワードも飛び出しましたし……



 このアタッシュケースには、どんな重要なモノが入ってるんでしょうか?











 ママは、余りにその作業に夢中で……モフモフのウサギパジャマの上下を1日じゅう着たままな事に気付いて無いみたいです。



 ふぅ、夢中になるとよく時間を忘れるんですよね。ワタシのママは……



 よく見るとママ、作業を続ける邪魔にならない様に手足の袖先を少し折り返して。すっぴんレイプの脅威から、口に当てたマスクを優しく庇護してます。


 ママの名前は上村京子うえむらきょうこ、年齢は45才です。ワタシをここまで、母手ひとつで育ててくれました。



 でも、パパは……ワタシが生まれる前から消息が不明なまま……



 ワタシは何となく気を遣い、その事について聞いた事は有りません。その時が来たらママから告白してくれる筈だって、信じてますから。



 ママの髪はクリーム色の腰まで伸ばしたロングで、ストレートヘアにしてます。そして、目の色はカラコンを入れてブラウンに変えてます。


『朱璃ちゃんとお母さん、まるで双子みたいに見た目が同じよねぇ! どちらがどちらか、見分けが付かなくなる事も有るわよぉ』


 前にご近所さんからそう言われた事が有ったらしく、ならばと髪の色を染めカラコンを入れ始めたそうなんです。


「私、朱璃のキャラクターを埋もれさせたくないの。尊重してあげたいのよ!」


 ワタシのオンリーワンを認めてくれてる、娘想いの良い自慢の母親です。


 そんなママですが、実はいつも足を引き摺って歩いてます。聞いた話、30年前のある出来事で足に大怪我を負ったそうなんです。



「そう、第1次キュルミー・・・・・大戦がきっかけだったのよ」


 ママ、『第1次キュルミー大戦』なんて歴史の教科書の何処にも載って無いんですけど?



 ちなみに身長は、ワタシよりちょっぴり低い152cmなんですが……


 お胸の大きさがDカップでワタシより大きく、しかも出る所はしっかり強調し引っ込む所は見事に括れるメリハリボディをこの歳でも地道な努力でキープし続けてます。



「ママ、スゴいです……」



 ワタシ、尊敬の眼差しでママを見ます。いつか母超えしたい目標として……



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