第011話.悪戯心に火が点いて
だんだん、ボクが旋回する時の高度が低くなって来たの! 低くなって来たから分かるよね? ボクってそんなに大きくは無いのよ。
シュパァッ……!!!
キラ……キラキラキラ……!!!
もうそろそろ夕空の向こうに、夜の帳が下りて来る時間帯になって来たの。
ボクの光と光の合間から左下の方向に、尾翼が出たの! 燃え盛る紅い炎から伸びる桃色の垂れ桜……とても幻想的なのよ!
今居る場所から右を向いて海に目を移すと、沖まで漆黒の海が広がってるの。イカ釣り漁船が発する集魚灯の赤い光が、チカッチカッと所処に見えるのね。
タンタンタン……タンタンタン……
今度は左を向くと、その県道から少し逸れて山肌に沿って台地へと続くなだらかな上り坂が在るの。横目には段々畑が見えて、車のヘッドライトの光が反射してるのよ。
ボクの
シュルンッ……!!!
スルン……シュシュ……!!!
車のヘッドライトの群れに混じって、さっきの少女が放課後の部活動を終わらせ、自転車を押して家路に向かっていたの!
目の前に沖の向こうまで漆黒の海が広がってる中、街を疾走してたボクは最後にあの少女と正面からカチ合ったのね。
ボクは炎の様に燃える翼、桃色に垂れ下がる尾翼に続いて、光と光の間から見える嘴で『咆哮の構え』をっ……!!!
「危ないっ!」
少女は咄嗟に両耳を手で塞ぎ、目を瞑ったの! 自転車を、ガシャンと横倒しにしたままで!
でもボクも慣性の法則で、すぐに止まれる訳も無くてー。
「く、く~ぇ〜〜」
……???
ボクの声はドップラー効果で弱々しい悲鳴だけを残して遠ざかり、少女の目の前をそのまま素通りし……そのまま、フッと姿を消したの。
思わず某お笑い番組ばりに、すてーん!!!とベタな程前のめりにスベり倒してた少女が印象的なのね。
「何なんですか、今のは一体……?」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
【う・ん・ち・く♡】心桃市について
補足として、心桃市の基幹道路は途中で二股に分かれていて、一方はそのまま海沿いに、そしてもう一方は台地を登って行くの。
丁度その二股の付け根には、心桃市の『教育特化地域』が広がるのね。
教育特化地域に指定されてる学校は市立中学校の「海皇中学」と裏に隣接してる市立高校、現在朱璃が通う「海皇高校」の2つ。
どうやら教育に特化する為の“テストケース”として建てられた、所謂『中高一貫校』の進学校らしいの。
噂では、この海皇高校から東大生を多数輩出してるとかしないとか……ボクには関係無いのね♪
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます