Ep.2 日常と夢
私は吉野 鈴。最近電車の事故で死にかけたが、「死後の世界」の人に助けられて生き返った。そのために、私には「夢にする」と言う力を手に入れた。夢だと思えば、それは夢になると言うもの。おかげで私が死んだ事は無かったことになった。
何気ない朝の登校前。私は悪夢から起きて、挨拶をする。
「んー…おはよう」
「おはよう。鈴。朝ご飯出来てるから食べなさい。」
窓から見える空は青く高く澄んでいる。そんな事を考えながら朝ごはんを食べる。果たして、あの悪夢は夢なのだろうか?こんなにも脳裏に焼き付いているのに。疑問を考えているうち、登校の時間になった。いつも通りの通学路が目に映る。
(本当に夢で済んだなら気にすることはない…)
そう自分に思わせ、踏み出す。学校に近づくにつれ、道は同校の制服の人で溢れていく。いつものように騒がしい道を、一人静かに抜けていく。そうして抜けていき、教室に着いた。騒がしく人々が騒いでいるのを背に、また夢について考える。
(夢なのに、あそこまで記憶に張り付くのだろうか…?記憶に明らかに残っている訳がないのに…)
そう思いながら、物をガサゴソ鞄から出しているうちに忘れ物に気がついた。ちょうど、厳しい先生の授業だ。
(やっばい…!夢…そうだ!これは…夢なんだ…!)
そう思っていると、目が覚めた。悪い夢だ。妙にリアルで、現実との区別がつかなくなりそうだ。そう思うと、不気味にも思えた。
夢の教訓を生かして、準備物をしっかり入れ直す。これでよし。夢と同じように学校に行く。人混みを避けながら。
ぼーっとしながら信号を渡るその瞬間、血の匂いがむせ返った。朧げに、熱い体で感じる鈍い痛み。騒がしい周り。よく見えない、回らない頭で事故にあったと言う事実を理解した。考え事をしながら渡っていたからだろう。うまく集中できない。夢だと脳に思い込ませることが出来ない。それが、最後の記憶だった。
目が覚めると、白い部屋にいた。消毒液の匂いが鼻をつく。自分の体に目をやると、骨折で済んだことがわかった。運が良かったようだ。まだ、意識は集中しない。貧血だろうか。
そばで、親が泣きついている。意識はどれくらいなかったのだろうか。悲しませたことは夢…なのだろうか。意識を集中してみる。これは夢だと、脳に語りかける。意識が遠のいていった……
目が覚めると、朝のベットの上だった。学校に行く夢を見た夢で事故にあった夢を見た…混乱してくる。
何が夢で、何が現実なのか。脳裏に焼き付くような記憶で分からなくなってくる。考えれば考えるほどその考えに呑まれてしまいそうな気がして…その事を考えるのをやめた。
意識から記憶を振り払いながら登校する。不思議と脳裏に焼き付いている記憶に恐怖を抱きながら早足で進んでいく。他のことが考えられない。考えを振り払うのが精一杯だ。
そうだ。この考え自体が夢であれば消せる。そうだ、こんなことなど考えなかった…
起きるとそれはベットの上だった。こうして、私の4回目の今日の朝は始まった。
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