2-12 晴れのち……曇り?

 作戦は順調に滑りだした


 ふたりは私の選んだアトラクションにふたり並んで乗り、私はそれを後ろの席からながめる

 アトラクションが揺れるのにシンクロして

 目の前の美形男子ふたりの頭がこれまた仲良くシンクロして揺れている


 そうそう、こういうのが見たかったのよ

 私の顔がにやけっぱなしになるのも無理ないわよね

 他の人に見られる心配ないから思いっきり頬をゆるめまくれる

 ただ降りる前に顔を元に戻すのがちょおっとばかり大変なだけ


 と思ってたんだけど……

 ちょっとなにやら雲行きがあやしい


 なぜか一向にふたりの距離が縮まる気配がないの

 だってアトラクションでふたりの頭が揺れている様子だって

 まるでただ揺れる2体のマネキンを見ているよう

 ふたりの間にシンパシーを感じないのよね


 アトラクションとアトラクションの間の移動の時も似たようなもの

 私はふたりが仲良く並んで歩いている様子を見たいのに

 ふたりの間にはつねに少し大きめの空間が


「どうです、楽しいですか」


 って聞いてみると


「ああ」

「そうだね」


 といった返事が一応は返ってくる


 ふたりの表情も一見するとにこやかに見えるんだけど

 私のイメージする「恋してる表情」とはなんか違うのよね

 どっちかっていうと、まるで「庭を走り回るペットの子犬をながめるような表情」ってとこかしら

 ここにはそんなのはいないのに、ねえ


 おかしい。こんなはずじゃなかったのに

 事前の脳内シミュレーションではカンペキに上手くいってたのよ


 だいたい今回の対象にアルバート会長とエドモンド副会長を選んだのだって

 エドモンド副会長がすでにアルバート会長に対して恋愛感情をいだいているから

 だから後はアルバート会長側に恋愛感情を芽生えさせれば

 ふたりは晴れて相思相愛

 恋愛感情を芽生えさせるのがひとりで済むから楽

 というのが理由だったのだけど


 うっ、いま、とんでもない可能性を思いついちゃった

 まさか、まさか、そんなことはないよね

 まさかふたりともお互いをこの私をめぐる「ライバル」なんて思っているってことはないよね


 ううっ、どうしたらいいの

 いま、ふたりの間には

 もしかしたら目には見えない火花がパチパチと飛び交ってるっていうの?

 しかもその原因は私

 昔の歌にもあった「私のために争わないで」状態

 なのに全然うれしくないんですけど


 さらに加えてアルバート会長からはこんなことを言われたわ


「われわれふたりが一緒に座るのは別にいい。別にいいが、ジャン、君が我らの前に座ってくれないか」


 えーっ、それじゃあ私がふたりの様子を後ろからながめてニヤニヤできないじゃない


 しかもエドモンド副会長もウンウンとうなづいている

 さっきまでふたりはライバル関係だったのじゃなかったの

 なんでこんなところだけ息ぴったりなのよ


 まずい。なんとかしないと

 でもまだ終わったわけじゃない

 だってこっちにはまだとっておきのカードが残っているんだから

 それは恋愛における最強とも言える存在

 そう、「お弁当で胃袋をつかめ」作戦よ

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