1-8 生徒会室にて③

 その表情を見て、私はこの問題は解決したと思った。けど、どうせならダメ押ししたくなっちゃった

 副会長に対して「私はあなたの味方です」アピールをしよう。そうすれば副会長の私への敵認定がぶり返すことはない

 絶対にない


 今度もまずは恐る恐るといった感じで始める


「あの、差し出がましいようですが」

「なんだ」

「まずは今回のことで副会長のお心をわずらわせてしまったことをおびします。そこで提案なのですが、もし僕でお役に立てることがあれば、副会長のお手伝いしたいのですが」


 エドモンド副会長は少し驚いたようだったけど、すぐにゲームの時のような微笑みをたたえると、私の方に歩み寄ってきた

 どうやら作戦成功ね


「せっかくの申し出だが、そこまでは必要ない。ただ……」


 そして私の肩に片手を乗せると、私の顔をのぞき込んできたの


「なるほど」


 深く納得したといった表情。なに? いったい何が「なるほど」なの? ひとりで勝手に納得しないでよ


「このように改めてよく見ると、アルバートが夢中になるのもわかる気がする」


 なるほど。そこに納得したのね

 って、ちょっと、ちょぉっと待って

 もしかして、もしかしてなんですけど

 流れがビミョーにキケンな方向へ行きかけていないですかね


「どうだろう、ジャン君」


 もう副会長の顔は、私の目と鼻の先にあった

 息がかかるほどに、そして

 もしかしたら心臓の鼓動が聞こえるかもしれないくらいに


「もし私が、いまここで君に告白したなら、君は受け入れてくれるだろうか」


 途端に私の中で特大の鼓動がひとつ

 同時に首から上全体の体温が一気に8℃は跳ね上がる

 またもや思ってもいなかった展開に、一瞬で頭の中が真っ白に……


 さすがに2度目ともなると「真っ白」にはならない


(あちゃー。「ダメ押し」は余計だったか。でもこの場合、なんと返事したらいいの?)


 さすがに「OK」はあり得ない。選択は「NO」一択

 問題はそれをどううまく伝えるか


「あ、あのー」

「返事が難しいか。ならいますぐでなくてもいい。ただ、君の心にめておいてもらえないだろうか」


 副会長は開きかけた私の唇に人差し指をそっと添えた

 まるで「もうそれ以上何も言わなくていい」とでも言うかのように


 うわあ、いますぐ「NO」を伝えなきゃいけないのに、その機会を封じられちゃった

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