1-7 生徒会室にて②

 どういうことか、順序立てて整理してみるわね


 エドモンド副会長はアルバート会長に恋をしている

 アルバート会長側はどう思っているのかはわからない。相思相愛かもしれないし、単なる生徒会での片腕としか思っていないのかもしれない

 でもいまはどっちでもいい

 肝心なのはエドモンド副会長が恋をしている相手のアルバート会長が、私に関心を示し始めたってこと

 しかも“ただならぬ”関心を

 副会長からしたら心穏やかじゃない

 会長を取られそうだと思ったのね

 私をにらみつけていたのはそういうわけね

 そうとわかれば対処も簡単


 私は恐る恐るといった感じで口を開いた


「あの、ひとついいですか」

「なんだ」


 ここで口調を一転させる。できるだけ強く、きっぱりと、断定口調で言うのが大事


「僕、アルバート会長を誘惑なんかしていません」


 私の強い口調に、さすがのエドモンド副会長もびっくりしたみたい

 

「なんだと」

「僕がアルバート会長にお会いした時の状況、どなたから聞かれましたか」

「聞いてはいない。聞いてはいないが、アルバートのあの様子を見ればだいたいのことはわかる」

「会長ご本人や、取り巻きの方々からも?」

「聞いていないと言っているだろう」


 副会長、明らかに苛立いらだっているわね

 でもこんなのは想定内

 だから私はおくすることなく、居住まいを正しながら言ったの


「では僕から説明します。あの日、僕は規則に反して遅くまで校舎に残っていました。それを学園内を巡回されていたアルバート会長に見咎みとがめられました。会長は僕を叱責しっせきしようとなされましたが、僕は会長の手を振り払ってその場から逃げました。これがあの時起こった出来事です」


 ウソは言っていないよ。アルバート会長が私を叱責しっせきしようとしたのは事実。私が会長の手を振り払って逃げたのも事実

 ただ、その間にあった出来事をちょっと省略しただけ

 重要な点じゃないからいいよね


「誘惑していないのだな」

「はい」

「でも現にアルバートは君にご執心のようだ。仮にだが、もしアルバートから告白されたら、君はどうする」

「お断りします」

「なにっ」

「もう一度言います。もし会長から告白されてもお断りします。僕にその気はありません、と」


 副会長は驚いたように目をまんまるにして私の顔を見つめていた

 が、やがてふうっと息を吐くと、椅子にゆったりと腰掛け直したの


「どうやら私の誤解だったようだ」


 その顔は、私のよく知るゲームでの副会長に戻っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る