0-10 面接①

 そこから男の子になりきるための訓練の日々が始まったの


 しかもジャンヌはジャン=ポールとは別人ということになっているので、ジャンヌとしてレディになるための礼儀作法の訓練も同時にやりながら、ね

 なんせ無事学園を卒業したなら、今度はレディとして社交界にデビューしないといけないんですもの

 でも全部あこがれの学園に入るため。ちっとも苦にならなかったわ


 月日が流れるのは早いもの

 あっという間に2年あまりが過ぎ……


 ついに最終試験、理事長の面接の日がやってきた

 面接の日から入学式まではほんの数日

 だからここで失敗したらもう次はない


 その日は朝から雨

 なんかさいさき悪いなと思ったけど、自然現象だからどうしようもない

 馬車に乗って面接会場となる侯爵邸へ向かう

 馬車には御者ぎょしゃのほかは私だけ。だれもつけないというのが事前の約束


 緊張の中、やがて前方に侯爵邸が見えてくる


(あれが侯爵邸ね。さすがにうちより断然大きいわ)


 まだ着いていないうちから圧倒されそうになるけど、ここで尻尾巻いて逃げ出すことなんてできるわけない


 やがて馬車は大きな前庭を通って玄関前へ

 馬車を降りる。御者さえもいなくなって、ここからは本当に私ひとり


(遠くからでも大きいって思ったけど、なにもこんなにでかくしなくってもいいじゃない)


 絶対的な大きさからいったら前世で会社が入っていたビルの方が全然大きいはずなのに。何この威圧感。ハンパないわ


「ジャン=ポール様でいらっしゃいますね。お話はうかがっております。どうぞこちらへ」


 執事に案内されて屋敷の中へ進もうとするけど、玄関の扉が開いてその先に見える光景がこれまたレベルが違う


「どうぞ、こちらでお待ちください」


 通された部屋もこれまた豪華。前世の私はアンティークとか全然知識がなかったけど、そんな私にでさえ「ものが違う」というのがひしひしと伝わってくる


(落ち着け、ジャンヌ……じゃなくジャン=ポール。あれだけ努力したんですもの。絶対大丈夫)


 ひたすら言い聞かせる


 どれくらい経っただろう

 そうこうしているうちに、入り口のドアがノックされた

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