第12話 初仕事
依頼はカウンターで受けるらしい。別の受付嬢に依頼を受けることを告げ、ギルドを出た。
「あの…どうやって見つけるんですか?」
「うーん、まあ当てはあるかな〜。ねえ、姫さんの特徴を教えてくれない?」
「真っ赤な十メートルくらいある髪で、サングラスをしていて、5歳くらいの超美幼女です」
「なるほど…。間違えたらすごいな。さて、始めよう。探知」
先程、食堂からの景色によると、ここネザはだいたい3キロ平方メートル。
探知を発動させた感触では、前より範囲が広まっている。おそらく、五百は余裕だ。全力で六百メートルほど。
「2回の発動で見つけられるかな〜」
「え?今なんて言いました?」
探知発動中の二胡に、周囲の音は聞こえない。
「うーん…あ、居た。ここか」
探知を切り、同時に走り出す。
「えっ…!ちょっと、どこに行ったの…?」
二胡の瞬発力(速さ)は、カンスト間近である。
ランたちを置いて走り出した二胡がたどり着いたのは、おしゃれなカフェだった。
「ローリランへようこそ」と笑いかけるおねえさんを無視し、中に上がり込む。そして、中でパフェのようなものを食べていた幼女の肩を掴んだ。
「姫さん、だよね?」
振り向いた幼女は殺気を放ち、なにか魔法のようなものが二胡を襲った。
その瞬間、指輪と2つの鞘が張った3重の結界が攻撃を弾く。
「なっ…!私の攻撃を止めた…?そんな馬鹿な!」
そんなセリフに構わず、二胡が幼女の首根っこを捕まえる。
「なっ…!離せ!」
「話さない。ついてきてもらおうか」
言うが早いか、二胡が走り出す。もちろん、幼女は文句を言おうとしたが、二胡の速さに驚いて気絶した。
元の場所に戻ると、まだランたちはそこにいた。たった今、意見をまとめて出発しようとしていたところだ。
「二胡!?速すぎだよ…」
「え、早ければ早いほうがいいんじゃないの?」
「そっちの『早い』じゃないわ…」
ランが呆れたようにため息をつく。
「姫さん!どうしたんですか!?」
一方で、ヤ〇〇たちはやっとお目にかかった姫さんがぐったりと気絶していることに焦っている。
「う…」
「「姫さん!」」
どうやら幼女が気がついたようだ。
「は、速すぎ…」
「ですよねえ、見つかるの早すぎですよねえ」
「そうじゃ無い…」
幼女がまた、ぐったりする。
「姫さん!大丈夫ですか!?」
ヤ〇〇たちが慌てて看病するが、慣れていないのがまるわかりで、グシャッとやってしまいそうな危うさがある。
「ちょっと、あんたたちストップ!」
見かねたランが声をかけた。ヤ〇〇たちから幼女を受け取り、看病し始めた。
その間、ヤ〇〇たちが二胡に詰め寄る。
「なんで姫さんがあんなふうになってるんですか?まさか、お腹が空いて行き倒れてたとか!」
「いや、元気そうにパフェ食べてたぞ」
「パ…?まあいいや、じゃあなんであんなふうになってるんですか!」
「そうですよ!なにかしたんですか!」
「いや、別に…」
なんの心当たりもない二胡だった。本人には悪気などないのだから当たり前だ。
「じゃあ、なんであんなふうになってるんですか!」
「そうですよ!姫さんを見つけてからなにかしたんでしょう!」
「いや、別に…」
二胡の返事は変わらない。本人に悪気は以下略。
「じゃあ姫さんを見つけてからどうしたのか言ってみてくださいよ」
ヤ〇〇のうちの一人が言う。
「見つけたから声をかけて、攻撃されたから暴れてはいけないと思い首根っこを掴んで運んできた」
「それですよ!そういやそんな持ち方してたな!」
「いや待て、攻撃された…?姫さんの性格から鑑みるにそれは十分…というか十中八九そうだろうが…」
「そういうことか!…あの、姫さんの攻撃、どうしたんですか?」
「普通に防いだ」
「「それだ!そんなことされたら、姫さんのプライドはズタズタだろう」」
見事にハモったが、二人は完全に誤解している。幼女にとってショックなことでも、流石に気絶するほどではない。
「違うわよ…」
たまらず、幼女が声を上げた。
「姫さん!ご無事ですか?」
「見てわかると思うけど?」
「なるほど!」
「それより、私はそんなにメンタル弱くないわよ!こいつが速すぎるから気絶したの!」
「「ああ、なるほど…」」
またも、見事にハモるヤ〇〇たち。
「ねえ、依頼を達成したからギルドに行きたいんだけど、探しものも持っていったほうがいい?」
「そうですね。行きましょうか」
疑問が解決して、スッキリした様子のヤ〇〇たちとともに、ギルドへ向かう。依頼の達成は、一階の受付で報告しても良いそうだ。
ただ、魔獣討伐などは証として持って帰った素材の鑑定が必要なので、2階に行く必要がある。
「依頼達成ですね。今回の依頼は難易度が星5なので、達成報酬は金貨5枚となります。銀貨や銅貨に両替しますか?」
「うーん、大丈夫です。ありがとうございます」
金貨一枚が一万円、銀貨が千円、銅貨が百円だ。
「今日は色々付き合ってくれてありがとう、ラン」
「全然大丈夫よ」
「そうかな?結構大変だったと思うけど。っていうか、まだ昼だね。お金も稼げたし、何か食べに行く?大したものは買えないけど、奢るよ」
「いいの!?じゃあ私、行きたいお店があるんだよね」
「どんなところ?」
「ソウカンミっていうスイーツがのがとっても美味しいお店」
「ソウカンミ?なにそれ」
「いろんなものが層になってて、すごい甘いの」
「いろんなものが、層に…甘い…。パフェのことかな?店の名前はなんて言うの?」
「ローリランよ」
「ローリラン…。そういえば、幼女が居たのはそんな店だったな」
「わかる?」
「うん。じゃあ、一緒に行こうか」
二胡は全く気づいていないが、デートに出かけられると知って、ランはご機嫌だった。
『ご主人さま、そんなことして期待させたら可哀想ですよ…』
魔剣が呟くも、二胡には聞こえない。
『はあ…。なんか最近、ご主人さまに無視されがちな気がする』
『魔剣の話してる内容は御主人様にとってどうでもいいことだからね〜。それに、普段は話しかけるのを控えてるっていうのもあるし、仕方ないよ〜』
『そうだな。にしても、暇だ』
『え〜、デートなんてそう見られないよ〜?もったいない〜。楽しもうよー』
『そうだね』
剣たちが会話するが、二胡の耳には入らなかった。
「俺、パフェ好きなんだよね」
そう、パフェは二胡の好物なのだ。
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