闇との出会い

第10話 ギルド登録

「お待たせいたしました。こちらに記載願います」


 受付嬢が書類を差し出した。全て、異世界語である。


「読めないじゃん、これ…」

「翻訳する?」

「いや、大丈夫」


 ランの申し出を断り、二胡が書類に向き直る。執事が二胡を睨んだが、もちろん気にしない。


「翻訳」


 自分以外には聞こえないような声で、二胡が言った。


 翻訳魔法 マスター:真田 二胡

 発動条件:十文字以上。

 使用魔力:百文字1。百文字以下でも魔力は1消費する。

 詠唱:「翻訳」のみ。

 その他:頭に思い浮かべた言語に文字を変換させる。一度翻訳させた文字を再度翻訳することも可能。


 もはや、慣れたものである。


〈決定〉


「え!?すごい、文字が変わった!」

「成功したみたいだな」


 二胡が満足げに頷く。執事が絶句した。


「では、記入してください。まずは、冒険者仕様からですね」


 名前:真田 二胡 ㊚・女 24歳

 職業:        種族:人間

 身長:175cm 体重:58kg

 性格:適当 髪:黒 瞳:灰色

 武器:聖剣、魔剣

 出身:異国 言語:日本語、ヴィル語

 魔法:木火土金水、他


「だいたい埋まったけど…。職業ってどんな感じですか?」

「そうですね。盾役はなさそうだから…魔法は使えますか?」

「はい」

「でしたら、魔法使いが良いと思います。剣が扱えるなら魔法剣士でもいいんですが…」

「扱えますよ(多分)。あと、剣は2つで、両方とも短剣です」

「でしたら、魔法双短剣使いになると思います。要素が多いので、削っても良いと思いますが…」

「いえ、ありがとうございます」


 名前:真田 二胡 ㊚・女 24歳

 職業:魔法双短剣使い 種族:人間

 身長:175cm 体重:58kg

 性格:適当 髪:黒 瞳:灰色

 武器:聖剣、魔剣

 出身:異国 言語:日本語、ヴィル語

 魔法:木火土金水、他


「翻訳」で言葉を戻し、受付嬢に渡す。


「はい、たしかに受け取りました。依頼は、ギルドによって難易度別に分けられています。最も簡単なのが星1、最も難しいのが星5です。もちろん、難易度が高いほうが報酬は上がりますが、ものによっては失敗した際に賠償金を払う必要性があったりしますので、お気をつけください。まずは星1から始めてみてくださいね」

「はい、気をつけます」

「それでは、冒険者のギルドカードになります。これを使えば、ステータスの確認が可能です。魔力を通せば表示されます。覗き見ができないよう、一度登録された魔力以外では発動しないのでお気をつけください。お金が貯まれば、もっと性能の良い冒険者カードにすることも可能ですよ」

「なる程。いつか買います」

「はい。では、続いて技工ですね」


 技工には職業のかわりに得意な技巧品を書く欄があり、金物と書いておいた。


 闇は冒険者と変わらなかったが、最後に起請文を書かされた。


 あなたは闇ギルドでの依頼を誰にも口外せず、どこにも記さないと誓いますか?  YES/NO


 もちろん、YESにした。


「では最後に、傭兵ですね」


 なかなか時間がかかったが、仕方ないだろう。傭兵に関しても、


 あなたは担当した国家を裏切らず、また、己が納得して依頼を受けた司令官に従い行動することを誓いますか?  YES/NO


 これもやはりYESだ。


「では、それぞれの場所を案内しますね」


 受付嬢によると、階によって別れているのだそうだ。ここ一階がギルドの受付で、依頼したいことがあるとここに来るらしい。

 そして二階が冒険者、三階が技工、五階が商人、十階が傭兵になっている。

 空いている四階は食堂、六階が訓練場。

 残りの七、八に宿泊施設、九階がギルドの仕事場になっているらしい。

 闇は地下にあるのだが、それが何階なのか、誰も知らない。一本の階段を降りていった先にあることだけは確かだ。


 また、地下の他のスペースはギルドの宝物庫になっていて、依頼者から預かったお金を保管する金庫、年に数回開催される武闘祭の成績優秀者に与えられる至高の武具等々…。

 国庫にも匹敵するらしい。


 場所は覚えることができた。


「そうだ、今日、ギルドに泊めていただきたいんですが、いいでしょうか?」

「大丈夫ですよ。駆け出しの方たちへの救済措置として、初仕事から3ヶ月、無料で部屋を貸し出しています。ご案内しますか?」

「お願いします」


 案内された部屋に行き、鍵をもらう。


「ありがとうございます」


 受付嬢にお礼を言って、十畳ほどの部屋にランと二人きりになった。


「もう日が暮れるわね。明日、一階に来て。私が初仕事について行ってあげるわ」

「そうか、ありがとう。じゃあ、また明日」

「ええ」


 ランが帰ってから、ベットに突っ伏す。


「疲れた…」

『本当に。何も話さずにいるのは、ストレスが溜まって仕方ない』

「魔剣、居たんだ」

『…扱い雑じゃないですか?』

『そんなことより寝ようよ魔剣〜。もう眠い〜』

『たしかに』

「同感だな…。まだ早いけど、今日は寝よう」


 ベットはかなり上質らしく、よく眠ることができた。

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