第4話 驚愕のステータス確認


「ステータス確認?」


 ツバキは不思議そうにイヅナに向けて問いかける。そもそも普段ゲームなどしないツバキには馴染みのない言葉。


 当然ステータスの有無などは知らないだろう。


 そんな不思議そうなツバキに対し、イヅナは目をキラキラとさせて返事をする。


「そう! ステータスの確認じゃ。異世界に来たからには言ってみるのが常識じゃ!」


 常識かどうかはさておき、自分の能力を確認しておくのは悪いことでは無いだろうか。それに自分の能力を知っておくことでこれからの生存率がかなり変わるはず……


 実際にステータスが見れるかどうかは別だが……


 ツバキは正直言ってかなり恥ずかしいが今の自分を知る事は重要だと思い、覚悟を決めイヅナと共に叫ぶ。


「「ステータスッ!!」」


 すると二人の目の前に宙に浮かぶ半透明のプレートが現れた。



〈名前〉イヅナ 〈種族〉妖狐


〈レベル〉1


〈ステータス〉

 筋力:F

 耐久:F

 敏捷:D

 魔力:D

 精神:E

 

〈ユニークスキル〉『豊穣』


〈スキル〉『狐火』『変化』『剣術』『妖術』

     『幻術』『仙術』



「なぜじゃあああーーッ!!」


 イヅナは膝から崩れ落ち四つん這いになったかと思うと悲痛な叫びをあげた。

 隣でステータスを見ていたツバキは一瞬ビクッとするが、イヅナの叫びをスルーして再び自分のステータスに視線を落とす。


 なんとスルースキルが高い、きっとツバキにはスルースキルがあったのだろう。


 だがツバキのスルーも虚しくイヅナはステータスについてツバキに話すように文句を言い始める。


「な、なぜ妾のスキルがこんなにも少ないんじゃ! しかもステータス値が低過ぎる! 普通ここはレベル999とかステータスオールSとかじゃろ……」


 イヅナはその後も自分のステータスに対してぶつぶつと文句を言い続ける。流石にツバキもその様子を見かねて落ち着くように促す。


「落ち着いてくださいイヅナ様。ほら、私もレベル1ですし、これから一緒に強くなっていく方がバランスが取れていいかもしれませんよ」


「……すまぬ、ちょっと熱くなったしまった。……しかし、なぜ妾のステータスがこんなに冴えないのじゃ?」


 ツバキの言葉を聞きようやく落ち着きを取り戻したイヅナはステータスを見ながら、なぜ自分のステータスがこんなに低いのだろうと首を傾げる。

 そんな様子にツバキは自分なりの推測を立て、イヅナに説明をする。


「もしかしたら、小さくなってしまった影響かもしれませんよ? 元々イヅナ様は大人の姿をしていられましたし」


「そうじゃったとしても! なぜ小さくなってしもうたのかが分からぬ……」


 二人してイヅナのステータスと身体について悩んでいるが、答えは見つからない。


 そうしている間にも時は刻々と過ぎていく。

 

「なってしまったものは仕方ない。早く移動せねば日が暮れてしまう。そうなれば妾たちは草原で野宿じゃ、妾はもう野宿はしとうない」


 イヅナの過去に何があったのか知らないが、今考えるかことではない。

 切り替えてまずは移動だ。


 こうして二人はようやく町に向かって歩き出す。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 二人が町に向かって歩いているところでイヅナがふと思い出した。先程の騒ぎで聞くのを忘れていたツバキのステータスについてだ。


「ところでツバキのステータスはどうじゃった?」 


 早速とばかりにツバキに詰め寄りステータスを聞き出す。

 イヅナの質問にツバキは自分のステータスを開きながら、もう一度再確認する。

  

「私のステータスですか? うーん、特に変わったところはなかったですよ」


 そう言ってステータスをイヅナに見せようとするが、ここでツバキの頭に疑問が浮かぶ。


 人にステータスを見せることが出来ただろうか? 異世界ものの定番なら鑑定などでステータスを見る事ができるのだがイヅナは『鑑定』のスキルを持っていない。


 分からないことはゲームが好きだったイヅナに聞いてみることが一番と思い、早速聞いてみる。


「イヅナ様、ステータスってどうやって見せればいいんですか?」


「そう言えばそうじゃった! う〜ん……見せたいと念じておれば見えるじゃないか?」


 なんとも適当だが他に出来る事も何のでやるだけやってみる。


「……こうですか?」


 するとツバキの念が通じたのか半透明のプレートが徐々に濃くなってくるではないか。これでおそらく他の人にも見える様になったのだろう。


 早速ツバキのステータスの確認するため、覗こうとするが身長差があり見えない。ステータスが現れる位置は頭の位置になる為、背が低くなってしまったイヅナではツバキのステータスが見えないからだ。


 二人の間に微妙な空気が流れる。


 気まずくなったツバキは気を遣い屈もうとするが、イヅナはその申し出を断る。

 どうするのだろうと思い見ていると、なんとイヅナは宙を歩き始めたではないか!


 確かに凄いのだがそこまでしてイヅナは子供扱いされたくないのかとツバキは思う。だが、その意地が余計に子供っぽく見えるとも思えた。


 そんなことより、今はステータス確認だ。

 

「どうですか、見えますか?」


「見える! 見えるぞ!!」


 

〈名前〉豊生ツバキ 〈種族〉異世界人


〈レベル〉1 


〈ステータス〉

 筋力:E

 耐久:E

 敏捷:E

 魔力:E

 精神:E


〈スキル〉『槍術』『弓術』『結界術』『神楽』『料理』

     『魔力操作』『身体強化』『鑑定』『家事』

 


 確認したツバキのステータスは全て平均的、スキル構成も前の世界で得意としていることばかりだった。


「ほうほう、ツバキは中衛か後衛で攻撃しながらサポートする支援タイプじゃな」


 冷静にツバキのステータスを確認し、役割を考える。

 こういう所はしっかりしているのに私生活はダメダメなのだから不思議なものだ。


「イヅナ様はどんなのでした」


「んっ? 妾のスキルは剣も魔法も何でも出来る万能タイプじゃな。まぁ、妾程にもなると苦手なことも無くなるものじゃ!」


 得意げに胸を反らせながらそう言い、ツバキに自分のステータスを見せる。

 先程はチラッとしか見れなかったが、今回じっくりイヅナのステータスを見てツバキは少々疑問を抱く。


「イヅナ様のステータスって結構偏ってますね。イヅナ様ならもっと全部平均的なステータスだと思ったのですが」

 

「まぁこの身体だからのぉ」


 そう言うとイヅナは自分の体を見て嫌そうに言う。

 ステータスが低くなったのは小さくなった影響かもしれないというのは的を得ているのかもしれない。 


 嫌なことから気を逸らす為にイヅナは強引に他の話題について触れ出す。

 

「それよりツバキ、お主『鑑定』のスキルを持っておるではないか! 異世界物の定番のスキルじゃ無いか。くぅ〜、羨ましいのじゃ」


 イヅナは心底羨ましそうにツバキのステータスに表示された『鑑定』のスキルを見つめる。


「イヅナ様だって『豊穣』なんて凄そうなユニークスキル持ってるじゃないですか。私はそっちの方が羨ましいですよ」


 お返しとばかりにツバキはイヅナのステータスを褒める。これで少しでもイヅナの機嫌が良くなる様にと願って。


「むふ〜、そうかそうか羨ましいか〜」


 案の定イヅナは自分のスキルを褒められてニヤニヤが止まらなくなっている。

 褒められて調子が良くなったイヅナは先程まで機嫌が悪かったとは思えないほど満面の笑みで歩き出した。


 ツバキの思惑にも気づかずに……


 前の世界でもイヅナはちょっと褒められると機嫌が良くなって元気になるから扱いやすいとツバキには思われていたのだった。




 お読みいただきありがとうございました。


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