第3話 魔物遭遇!?
イヅナから異世界の可能性があると聞いたツバキは、これからどうすればいいのか悩んでいた。
この世界でイヅナとツバキの二人は家なし、職なし、一文なしなのだ、慎重に行動しなければ帰る所か数日も経たない内にくたばってしまう。
しかし、これからどうするればいいのでしょうか……考えるにしても何からすればいいのかありすぎて困ってしまう。
やはり、こういう時こそ年長者の意見を聞くのが大事だな。
そう思ったツバキはイヅナに助言を貰おうと話しかける。
「イヅナ様、これからどうしますか?」
「………」
「……イヅナ様?」
返事が無いので不思議に思いイヅナの方を見ると、なぜかスライムを手に持ってモチモチしているところだった。
ツバキはイヅナの奇行に声を荒げる。
「イヅナ様ッ!?」
ーーぶちゅッ……
何かが潰れた不快な音が聞こえたかと思うと、イヅナが手に持っていたであろうスライムはドロドロに溶けていた。
驚いた勢いで手に持っていたスライムを握り潰してしまった様だ。
「ス、スラタロォォオオオッーー!!」
先程の手に持っていたスライムであろう名前を潰れてデロデロに液状になったスライムに向かって悲痛に叫ぶ。
ツバキはここで思った。しかし、いつの間にスライムを捕まえて、更には名前なんてつけていたのだろうか?と……
流石に悪いと思ったのか少しバツの悪そうな顔をするのだが、そもそも先程まで自分たちを襲おうとしてきた奴だ、倒してしまう方がいいのではと思った。
……でも一応謝っておくことに
「あのぉ〜、ごめんなさい?」
「ふぅ、いや謝らなくてもよい。そもそも、このスライムは妾らを襲おうと近づいてきた所を捕まえただけじゃ」
先に言え!と思ったが言葉をグッと飲み込む。
文句を言って何を言われるのかたまったものでは無い。
それよりイヅナの手はスライムの粘液でベトベトになっており、どんな影響があるのか分からないので早急に手を洗って欲しかった。
「それよりイヅナ様、スライムの粘液でベトベトじゃないですか! 早く手洗ってくださいよ!」
「……それもそうじゃな」
イヅナが術によって空気中から水分を集めて球体状に留まらせ、粘液に塗れた手を突っ込み洗い流す。
イヅナが作り出した球体状の水の形がスライムに似ていたが、きっと気のせいだろう。
手を洗い綺麗になった手を水から引き抜く。
すると不思議な事にイヅナの手の中には、キラキラと宝石のように輝く赤い石があった。
その赤い石は見るものを魅了するような不思議な輝きを放っていた。
取り出した赤い石を太陽にかざすように掲げる。
「むっ、なんじゃこれは? キラキラして綺麗じゃのぉ」
「それ魔石って奴じゃないですか? 前にイヅナ様がやってたゲームの中でそんな物がありませんでした?」
魔石、それはファンタジーでは定番のエネルギー資源。
ゲームなどでは換金アイテムとして売れるがこの世界ではどうなのだろうか?
「おぉ! 魔石とな! 何というファンタジーな響き。よしっ、お主はスラタローの形見として持って行くとしよう!」
イヅナは魔石を天に掲げ、太陽の光でキラキラと輝いた魔石を眺めながらうっとりしている。
すると最初にいた場所、つまり布団がある場所の方からツバキの声が聞こえてきた。
「イヅナ様ーー! これってイヅナ様の物じゃないですか?」
戻ってきたツバキの手には約100センチはある荘厳な雰囲気漂う黄金色の刀があった。
まるで金色の稲穂を彷彿させるような美しい柄巻きと、黄金色に輝く鍔、金具は一つ一つが光り輝く宝石の様な豪華絢爛の刀だ。
その刀はまさしく豊穣の神として名高い、イヅナに最も相応しき愛刀。
「
なんでイヅナ様の刀がこんなとこにあるんだろう? いや、今そんな事はどうでも良い。武器が有ればこの先の安全が多少でも上がるのだからラッキーとでも考えておこう。うんそうしよう。
ツバキは不思議なことがあるなぁ、と思い深く考えるのはやめた。
「武器があれば複数で来られない限り大丈夫でしょう。しかし、これからどうしましょう」
「うむ。取り敢えず妾は腹が減った、なので町に行ってご飯にします!」
なんともマイペースなイヅナである。
ツバキは、イヅナ様はもしかして精神も幼くなってしまわれたのではと思った………いや、これは元からだった。
しかし、街に行くのは悪くない手だ、町なら情報も集められるし最低限の生活もできるだろう。
そう決断付けたツバキはイヅナの案に同意して町まで向かうことに決める。
「では、イヅナ様、これから街に行きましょうか。で場所は分かります」
「分からん!」
「そうですよね……」
それもそうだろう、ここは異世界。ましてや、どこかも分からない場所にいるのだ、町の場所など知るよしもない。
途方に暮れているツバキだったが、ここでイヅナの狐耳イヤーが役に立つ。
「ふむふむ。あちらの方角から微かにだが、大勢人の声が聞こえる気がする」
イヅナの指の指す方角から声が聞こえると言うでは無いか。流石やる時はやる神である。
「ほんとですか!」
「うむ。妾の耳を舐めるでないぞ。数キロメートル先で落ちた小銭の音でさえ聴こえる地獄耳じゃ」
前言撤回、なんとも嫌な神である。
しかし、今ではその嫌な特技も役に立つ。
向かう先は決まった。
早速、町を目指して歩こうとするツバキをイヅナが呼び止める。
「待てツバキ! まだやる事が残ってるじゃろ」
「残ってる事?」
一緒に転移してきた布団も持ったし、辺りに何か落ちていないか確認もした、他に何かする方が残っていたのだろうか不思議に思った。
そんなツバキの疑問にイヅナが答えてくれる。
「それはステータス確認じゃ!」
お読みいただきありがとうございました。
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