第35話 はむきち、ドラゴンを亡き者にする

校長室室には校長室とレイム君、そして王城からの使者が居た。


3人ともテーブル上の羽アリさん地図を見ながら現状分析をしていた。


「このテーブルをまるごと王城に運べたら良いのですが」


レイム君の問いに校長が答える。


「この大きさのテーブルは難しいのう。それこそ王城の宝物庫にある転移石でないと無理じゃろう。それはそうと…」


魔力がゆらめき、はむきちが転移によって現れた。

はむきちはテープルど真ん中に転移したので、羽アリさん地図の立体映像に重なって、埋もれているように見える。


「はむきち様、埋まっておられるようですが、大丈夫ですかの?」


「僕は大丈夫。それより今は国家存亡の危機だ。真の勇者たるレイム君が大活躍する場面だよ!」


はむきちは敢えて場の空気を読み違えたかの発言を成した。

つい先日、魔族は本来友好的なのだと自説を述べたばかり。

しかし現状既に非常事態、そのことについて改めて議論するような余地はない。


「そんなぁ、無茶振りが過ぎるよぅ…」


レイム君は半泣きに答えた。


「うん、確かに、今の君は真の勇者に相応しい実力を備えていない。それだから、今日のところは、僕が君にお手本を見せよう。今、君に僕の真似が出来ないとしても全く問題無いよ。何故なら、学べばいずれ君にも出来る事だからね!今はしっかり見といてね!」


両手を広げてレイム君を鼓舞するはむきち。

ジャンガリアンハムスターなので、こんな状況でもとても可愛い。


「一気にかたをつけるよ!!

先ず、32都市の羽アリさんカメラを起動!!」


地図上にライブ映像がポップアップし、破壊の限りを尽す32体のドラゴンが映し出される。


「羽アリさんを、ドラゴンの背中に乗っけます。最低一匹乗れば良いので簡単です」


ドラゴンブレスで既に多くの羽アリさんが消滅していたが、そもそもの全体数が莫大なため、作戦は滞りなく遂行されていく。


全方位からコッソリ接近する極小の羽アリさんを、極大なるドラゴンは認識出来ずにいた。


「羽アリさん全機セット完了。羽アリさんには尊い犠牲になって頂くよ。全機マーカーとして設定。仕上げにブラックホール発動。ブラックホール!!」


マーカーとなった羽アリさんを核にして、ブラックホールが発動された。


このブラックホールという魔法は、天体に存在するブラックホールの超ミニチュア版のような仕様になっている。


32匹のドラゴンは、瞬間的に軽自動車の大きさに圧縮され、球体となってしまった。僅かにその一瞬で、ブラックホールは終了したのだ。


映像を見て皆が驚嘆した。


巨大なドラゴンが呆気なく倒されてしまった。

それだけでなく、周辺の建物、あるいは地面まで丸ごと抉れて消滅している。

ドラゴンの表面に全てが張り付いており、強度の圧縮によってまだら模様の球体となっていた。


「あのドラゴン達を一瞬で殲滅とは…!!」


校長は驚愕のあまり二の句が継げずにいる。


はむきちの成した魔法攻撃は、超越的に規格外なのだ。

仮に全国から優秀な魔道具を千人集め、同時に連結詠唱したとしても、はむきちの魔法を再現することは難しいであろう。


はむきちのちっこい身体に、膨大な魔力量が備わるという奇跡。

そして無詠唱で幾千もの魔法陣を展開し、自由自在に連結、合成する技術の鮮やかさ。


校長はただただ驚愕し、暫く我を忘れて立ち尽くした。


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