第30話 ついでに王女まで魔力量爆上げしてみた
はむきちの一瞬の詠唱によって、レイム君と王女の身体は強く光り輝き、そして数秒後、光は穏やかに消えていった。
「せっかくだから、王女様の魔力量も増やしといたよ。ついでと思われるかもしれないが、僕達は既にチームだろ。闇魔法部の仲間だからさ」
はむきちはそう語ったが、内心はむきちは既に王女様に入れ込んでいた。
つまり、単なる見栄でカッコつけただけである。
はむきちは二人のステータスを確認し、魔力量増加と、二人にステータス異常が存在しないことを確認した。
「二人共問題無いね。さっそく効果を確認したいだろうけど、安全性を優先して検証作業は明日からにしよう。結界に守られた練武場か、あるいは広大な原野で、僕が多重結界を張ってもいい」
「それなら、私が練武場を借りておくわ。他の人が予約を入れてなければ良いけど」
闇魔法部顧問である王女様が練武場の使用を押さえる事になった。
「集合時間が確定したら、はむきちに知らせるわ。とりあえず夜になったら、昨晩のように転移で私の部屋に来てもらえるかしら?直接話す方が話が早いと思うの」
「お、おう…」
昨晩のようにというのは、つまりどういう事なんだ?
はむきちはドギマギしながら返事した。
そしてふと、女神様の事を思い出した。
レイム君と王女様の魔力量を一気に増大させたことも、昨晩王女様と関係を持った事も、女神様には何の報告もしていない。
もちろん、報告の義務を命じられてはいないから、はむきちの勝手も既に黙認されているような気がする。
しかし、はむきち自身女神様に問いたい事が幾つかあった。
先ず、女神様は獣人族であるはむきちは、要領さえ掴めば簡単に人型に戻れると説明していた。
しかし、はむきちは昨晩人型に戻れたものの、あれこれ実験してみても再度人型に戻る事が無かった。
そもそも獣人族は、獣と人間のハーフのような容姿なのではなかろうか。
ケモミミや尻尾が有ってもおかしくないはずだ。
しかし、昨晩の山田氏は人間そのものであった。
はむきちはその点嬉しくもあり、反面大いに疑問を抱いた。
更に付け加えるなら、女神様から託された勇者としての使命を完全に放棄して、現在レイム君に丸投げしている状態だ。しかも、王女様までも共犯にしようとはむきちは企んでいる。
後になって女神様から、
「お前、勝手に何してくれとんだ、コラ!!」
と、怒られても後の祭りである。
既にはむきちは色々やらかしてはいるが、魔族に対して直接的な対峙をしていない。
対話路線にせよ、強行路線にせよ、今の内に女神様に相談しておけば、どちらにでも舵を切る事が出来る。
はむきちは試しに自己ステータスを確認した。
すると、女神様とのチャット窓は未だにメンテナンス中と表示されている。
『礼拝室に行った方が良かろうか…???』
本当にメンテナンス中なのかな?
単に女神様が他の用事に夢中になってるだけなのでは??
一寸思案して、はむきちは女神様への相談を後回しにした。
少なくとも、今、緊急に連絡すべき状況ではないと思われた。
もしも現状に於いて、本当に緊急連絡すべき事態となっていたなら、女神様がチャット窓をメンテナンス中のまま放置しているはずがない。
はむきちはそのように判断を下した。
しかし事実は単純明快であった。
結局のところ、女神様とはむきち、双方共にポンコツなのだった。
双方共にポンコツだからこそ、はむきちは相談すべき重要な機会を失ったのだ。
後日はむきちは、あの時礼拝室に行って、直接女神様と話すべきだったと、激しく後悔する事になる。
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