第24話 はむきち、絶望の縁に立つ

気付いたら朝になっていた。

カーテンの隙間から刺す朝日の光が眩しく、はむきちは目覚めた。


目の前に、レイン王女の顔がある。

美しく涼やかな寝顔であった。

枕の上に立ち尽くすはむきち。

そう、山田氏ははむきちに戻っていた。


何故今が朝なのか、何故はむきち(ハムスター)に戻っているのか…。


はむきちは一瞬で思い出した。

そして激しく絶望した。


昨晩、王女は彼の魅了魔法によって、山田氏にべったり抱きついてきた。

山田氏は全裸で激しくティンコフをいきり勃たせていたが、王女は構わずに抱きつく手を緩めない。


『こ、これはあかんて…』


今思えば、更に鎮静の魔法をかけ直したなら、王女は我に返ったかもしれない。

しかし、我に返ったら全裸の山田氏に不敬であると怒り出し、収取がつかなくなっていたたかもしれない。


イクも地獄、イカぬも地獄。

ならばせめて気持ちいい地獄を選びたい。

山田氏の野生が彼自身の理性をふっ飛ばした。


「あぁん、はむきち、きてぇっ!!」


「うおおおお!!」


思えば、相手は王位継承権を持つ王女様である。

言うまでもなく、相手にしたら生命の危険がある相手だ。

本物の恋愛感情で結ばれたならいざ知らず、魅了の魔法によって関係を持ったとなれば、事実上強姦である。女神様の使徒だからといって、彼が王女あるいは王家から許される見込みはほぼない。

少なくとも、はむきちはそう自覚した。


王女はまだすやすやと寝ている。

しかしいつ起きるとも分からない。


スリープの魔法をかけるか?

いずれにせよ何時かはメイドが起こしにくるのだろう。


はむきちは小さな頭脳をフル回転させ、無難な解決方法を思索する。


プランA:とりあえず逃げて女神様に泣きつく


プランB:とりあえず逃げてレイム君に泣きつく


プランC:レイン王女を起こして直球土下座で謝る


プランD:レイン王女に忘却の魔法を掛けて昨晩のことは無かった事にする


プランE:王城全体に淫乱魔法を掛けて乱交パーティ状態にさせる事によって昨晩の状況をウヤムヤにしてしまう


プランD:時間を巻き戻す魔法を試してみる


はむきちは、プランDを試してみた。


しかし時間は巻き戻らなかった。


全言語自動翻訳スキルは非常に優秀で、未知の魔法であっても既知の魔法を自動的に合成、多重展開して無理矢理発動させる事が可能だ。


しかし、合成や多重展開を様々に工夫しても、この世界に於いては、魔法で時間を巻き戻すのは無理らしい。

全言語自動翻訳スキルは、優秀だが万能ではないのだ。


はむきちは、頭を抱えて脂汗をダラダラ流している。


見た目とっても可愛いポーズなのだが、残念ながら今は全くそれどころではなかった。


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