第19話 はむきち、我に返る

自分の仮説を真実の如くに熱く語り、後半捏造情報で皆を驚かせたはむきちであったが、困惑した表情のレイム君を見て、彼は突然我に返った。


『あっ、しまった!

レイム君には自分の事を獣人族の王子と説明しとったわ。

成り行きで使徒モード発動させちまったから、レイム君、ぢんわり混沌としとるはずや』


まあしかし、いずれアザール獣人国に行く機会があれば、自動的に僕の嘘はばれるよな。今は校長とアリスさんが邪魔だから仕方ないとして、後で正直に話して謝るのが最善であろうな。


「レイム君の魔法属性が無属性というのは、水晶球の鑑定結果なのだろ?」


はむきちは、強引に話を誘導することにした。


「何も光らなかったから無属性と判定されたのだろうけど、本当は違う。レイム君は闇属性持ちさ。闇は光の対極なんだから、光るはずが無いんだよ」


「えっ!?」


またもや驚くレイム君一同。

レイム君は過去にはむきちのスキル鑑定によって、闇魔法属性を指摘されてはいた。

しかし、水晶球についての説明は無かったから、内心の疑問を感じていた。

全く、今日ははむきちに驚かされるばかりだ。


「人族の魔法属性決定は基本的にランダムなのだが、先祖の属性系統パターンや特定の魔法アイテムの使用によって、出生時に特定の希望属性出現率を格段に高める事が出来る。逆に言えば、親が希望しない魔法属性の子供はほぼ生まれなくなっている。闇属性は弟王子の放逐事件以降、人間界では禁忌視されてしまい、また王家と教会の謀略で無属性扱いに格下げされた。結果として、今現在人間界では闇属性の者がほぼ生まれなくなっているんだよ。それなのに、王子たるレイム君が闇属性持ちとして生まれた。まさしくそれこそが天命なんだ」


はむきちはもっともらしい事を言っているが、レイム君が闇属性持ちだからといって、何故それが天命と言えるのか、実ははむきち本人にも分かっていない。

今の彼を支えるのは、雰囲気で状況を乗り切るという覚悟だけだ。


「ようやく僕とレイム君がこの部屋を訪れた本来の目的に戻るのだけれど、校長先生には僕とレイム君が禁書庫に入室出来る許可を頂きたい」


「ええ、そのようなことはお安い御用です」


校長は頷き、禁書庫を解錠する魔法鍵をレイム君に手渡した。


「レイム君、人間界では禁忌とされた闇属性魔法、君はその頂に立つのだ。先ずは禁書庫にある古文書の解析を行おう。人間界に失われた闇魔法、その呪文の全てを発掘するのだ!!」

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