第12話 はむきち、月夜に黄昏れる

女神様と礼拝室ですったもんだしたその夜、僕はレイム君の部屋の窓から夜空を見上げ、黄昏れていた。


その背中が余程寂しげに見えたのだろう、レイム君が心配して声をかけてくれた。


「はむきち、どうしたんだい?

ずっと夜空を見上げてるようだけれど、何かあったのかい?」


「まあね、今日は色々あったんだ」


「そっか。どんな事があったんだい?」


「君は友達だから、いずれ全て話すけれど、やたら大きな話でね、今日のところは静かに過ごして、気持ちの整理をしたいといったところかな」


「そっか。それならそれがいいよ。無理に話すことはないさ。あと、先日頼まれてたヒマワリの種もらってきたよ」


「これはありがたい。

さっそく頂くとしよう」


はむきちは、夜空を見上げながらヒマワリの種をポリポリした。


美味かった。


ちなみにこの時はむきちが考えていたのは、明日までに魔王軍を殲滅させる為の攻撃呪文の仕様だった。


ごく簡単で単純な魔法をいくつか合成し、そのような数十種を更に掛け合わせて誕生する鬼畜仕様な魔法、そいつを脳内に構築する。


決断すれば、今その魔法を発動することさえできる。


そう、勇者としての使命を思えば、問答無用でさくっと魔王を滅してしまえば良いのかもしれない。


しかし、その圧倒的的な威力の行使は、まるで自分が新たな魔王になっていくかのようにも思える。


はむきちは、それは違うな、と思った。

むしろこれから、レイム君と魔法学園で色々やらかす、そんなどうでも良い事が、魔王退治よりも大事なことのように感じられる。


「僕は君の友達だから、僕は僕の力を君を助けるために使いたい」


はむきちは小さく呟いた。


あまりに小さな声だったので、レイムは気付かなかった。

けれど友人として相応しく、きれいな夜空を彼と共に眺めていた。





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