第6話 レイム王子登場

エリアル:誰か、この部屋に近づいているようです。

…ああ、レイム王子ですね。


はむきち:レイム王子??


エリアル:この国の王子様ですよ。母親が平民出身なので、どちらかといえば不遇な扱いを受けています。


はむきち:なるほど、ファンタジー系ラノベにありがちな設定ですな。


エリアル:レイム王子にはレインという名の姉が一人います。彼女は王の正妻、つまり王妃の娘であるため、将来はこの国の女王として即位するはずです。

事実、周囲の王侯貴族達は彼女に大きな期待を寄せていて、彼女はその期待に相応しい内容を備えています。

相対的にレイム王子は誰からも期待されず、まるで存在していないかのような扱いを受けているという訳です。


はむきち:へえ、王子様だけど、状況的にはシンデレラみたいにイジメられてる感じなのかな。


エリアル:いえ、特別酷いイジメにあっているという話ではありません。ただ、彼は誰からも期待されず、希薄な人間関係しか築けぬまま、寂しい毎日を送っているという事です。

皮肉ですが、彼を一番心配し、日々に労っているのは他ならぬレイン王女です。


はむきち:とにかく、そのレイム王子が来るんだね。


エリアル:まもなくです。私の希望としては、山田様に彼の良き友人となって頂きたいと願っています。それが将来、この度山田様が異世界に召喚された、その目的達成に近づく大き契機となります。


はむきち:それなら、彼がハムスター大好き人間である事を祈ろう。


エリアル:彼は最近まで野ネズミを飼っていました。山田様が今居るケージは、その時に使われていたものです。


はむきち:ほう。


『その野ネズミは今何処に???』


エリアル:大丈夫かとは思いますが、万が一王子が山田様を攻撃するような事態となれば、私が責任をもって対応します。なので、とりあえず山田様は、彼の友人として相応しい態度で、彼に接してあげてください。


『女神様が一方的に語り尽くしたという感じだな。

まいいや、良くも悪くも納得するしかあるまい』


はむきち:分かった、了解…し…


僕の音声入力が終わらぬうちに、ギギ…と部屋の扉が開かれた。

燭台の小さな明かりを手にした少年が、ゆっくりとこの部屋に入ってくる。


可愛い雰囲気のある少年だ。おそらく7才くらいだろう。

僅かな明かりで暗い物置に来た事が、本人にとっては勇気がいる冒険だったのかもしれない。

恐る恐るという所作で、周囲を静かに伺っている。

そして、小さな声で誰かの名前を呼んだ。


「マッキー…、

マッキー…」


どうやら、自分が飼っていた野ネズミの名前を呼んでいるらしい。


僕は敢えて「ジジ…」と鳴いて自分の居場所を知らせた。

自動翻訳スキルが発動しないように、「ジジ…」とそのまま発音するのがコツだ。


とりあえず静かに様子見するという選択肢もあったのだが、女神様がレイム王子から攻撃を受ける可能性を言及している。


で、あるならばここは勝負だ。

相手は7才ほどのチビッコで、しかも明らかにビビリである。

口八丁手八丁で、ビビリ王子を攻略するのだ。

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