第5話 はむきち、素朴な疑問を語る

はむきち:ところで女神様、素朴な疑問があります。


エリアル:はい、なんでしょう?


はむきち:僕の名前は山田なんですが、何故ステータス欄の名前が『はむきち』になってるんですか?あと、MP値が異常に高い気がします。


エリアル:名前はステータスシステムが自動的に取得する仕様になっています。具体的には、肉体の個体名を参照する設計になっていますね。


はむきち:しかし、はむきちは僕のペットの名前なので、山田に変更した方が良いと思うのですが…。


エリアル:システムの仕様上無理です。とはいえ、この世界にはステータス画面を参照する魔法が存在しません。山田様だけが自己のステータスを確認出来るのです。なので、名前を変更せずとも実害は全くありません。


はむきち:なるほど。

気にはなりますが、実害が無いなら良いにしときます。


エリアル:ありがとうございます。次にMPの件ですが、一見大盤振る舞いに見えますが、実はそれほどでもないんです。


『え!?どういう事!?』


エリアル:実は、獣人族が得意な魔法は身体強化系のみです。

身体強化系の魔法であれば、使用コストは10以下です。

しかし、他属性の魔法を使用すると、最低でも1000必要になります。

獣人族の平均MP値は800なので、通常ですと身体強化魔法以外を試しただけでマイナス200、確実に気絶します。


『うーむ…』


はむきち:試せるけど、やれば気絶すると。酷い話ですなぁ。


エリアル:丁度良いので、平均MP値を種族別に説明しましょう。

魔族が1000、エルフ、ドワーフ、獣人族が800、人間が500です。

すると、人間が全種族中最下位で圧倒的不利に見えますが、コストを考慮すると全く話が違ってきます。

先程話したように、獣人族は身体強化系魔法なら低コストで使用出来ますが、それ以外を発動しようとするとMP枯渇で気絶します。死にませんが戦場では命取りです。

人類は、種族的には全属性魔法が使えます。

人間各個人に於いては、殆どが一属性しか使えないのですけれども、例えば人間10人対獣人族10人で戦うとなれば、戦略、戦術共に人間の方が多くの選択肢を持ちます。獣人族には回復役のヒーラーもいませんし、遠距離攻撃や全体攻撃が可能な魔法使いもいないのですから。


なるほど、獣人族は事実上身体強化魔法しか使えない。コスト的にそうなっている。しかし、勇者としての特例なのだろう、僕だけ桁違いのMPを持ってる。故に、僕は獣人族であるにも関わらず、コスト度外視で身体強化系以外の魔法がバンバン使えるという訳か。


確かにこれはこれでカッコイイかもしれん。


『妄想スタート!!』


魔法使いの集団が僕を取り囲んでいる。

僕は身体強化で防御力を最大限に上げる。

高まるオーラ、しかし魔法使いは高出力の雷撃を同時に発動、中央の僕は雷撃にバリバリと焼かれ、絶体絶命の状況である。


もうよかろうと、魔法使い達は雷撃を止める。

しかし、ドサリと倒れるはずの僕は立ったまだ。


動揺する魔術師ども、ニヤリと笑う僕。


「シールド展開!!」


僕は巨大なシールドを周囲に張る。防御の為ではない。魔術師どもを逃さぬ為だ。


「雷撃槍!!」


僕の周囲に巨大な金属の槍が何本も浮かび上がり、魔法使い達に照準を合わせる。

槍は雷を纏い、その光はバリバリと音を立てながら輝きを増していく。シールド内に光が満ちた瞬間、雷槍は全方位に射出され、魔法使い達を串刺しにしていく。彼らはシールドの壁に貼り付けられ、雷鳴と共に爆死していく。


今わの際に誰かが言う、


「何故、何故獣人族がこれ程の魔法を…。

油断したッ!!」


『ふっふっふ…妄想…終了…』


はむきち:なるほど、獣人族が勇者無双する為には桁違いのMPが必要という訳ですな。


エリアル:その通りです。ちなみに、エルフ族は光と風属性が低コストになっています。ドワーフ族は火と土属性ですね。獣人族は身体強化ですが、例外的に爬虫類系は火属性、魚系は水属性を併せ持つという場合があります。

また、例外といえば、聖属性は人間のみが持っています。そして、聖属性を持つ者が人類と神の仲立ちをします。

最後に、魔族は闇属性一種になります。

しかし一種とはいえ闇属性は侮れません。

闇は聖属性以外の全属性に似た性質を持っているからです。単一に於いては弱点が少ない最強属性と言えます。


なるほど。

しかし、全属性魔法を使える僕は闇属性も使えるという訳だよな。

全部行けるとなると、なんかもう、やる前から誰と戦っても負ける気がしないぞ。

見た目ハムスターだと説得力無いけどな。


てゆーか、実は僕が魔王なんじゃなかろうか。

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