第4話 はむきち、チャットする

ハムスターになってしまった自分であるが、当然ながら人間とハムスターでは身体の構造が全く違っており、その違和感に悩まされた。


まるで、強いアルコールに酩酊しているような感覚だ。


『す、すてーたす…』


詠唱したつもりが、ハムスターの発声器官では、ジジ…という音にしかならなかった。


『ステータス画面、どうしたら出てくるんや…』


と、その思いに応えるが如くステータス画面が現れた。


名前:はむきち

種族:ハムスター

職業:勇者

年齢:ハムスター年齢1才

スキル:全言語自動翻訳、全属性魔法、全剣技

レベル:1

HP:5

MP:9,999,999,999


ステータスが表示されたが、そのステータス表示枠の真下に、女神様との文字チャットを行う枠が表示されている。


はむきち:


と、その後にカーソルが点滅しており、明らかに文字入力待ちになっている。

しかし、スマホやタブレットの文字入力機能は現れていない。

もちろん、物理キーボードも無い。


『どうしろとゆーのだ』


ジジーとしか発声出来ないが、構わず呟いた。

すると、


はむきち:どうしろとーのだ


と、入力された。


そして、女神様からの返事が返ってくる。


エリアル:音声入力になっています。全言語自動翻訳スキルによってハムスター語が翻訳され、日本語がチャット画面に表示されています。


なるほど。こりゃ楽だ。

ジージー鳴いて構わんのだな。

しかし、相変わらず身体の具合は絶不調であった。


はむきち:さっそくですが、おそろしく身体の具合が悪いんですが、なんとかなりませんか。


エリアル:アジャストボディと魔法詠唱すれば、ハムスターの身体が、まるで人間の身体であるかのように自動調節されます。


なるほど。

何故魔法の詠唱が英語なのかと、突っ込みたい気持ちもあった。

が、おそらく気にしても意味が無かろう。全言語自動翻訳の機能が関わってる気もするし。


『アジャストボディ』


身体が発光し、僕は無事酩酊状態から脱した。

そして、ステータスの一部が勝手に変更されていた。


種族:獣人族

年齢:21才


ハムスターの寿命は約二年と短命なので、人間年齢らしい表示に安堵した。一年後に死ぬかもと内心焦ってた。

それにしても、獣人族ってどんなものかと。


エリアル:獣人族は、ラノベによくある獣人族です。全身に魔力を通すと、それがスイッチとなって人間に近い構造に変身します。つまり、ネズミ男になります。

もちろん、ハムスターに戻る事も出来ます。


はむきち:ネズミ男!!


僕は思わず叫んだ。

正直、ネズミ男はガッカリだ。

悲鳴しかない。

しかしよくよく考えると、ずっとハムスターでいるよりは、ネズミ男の方がマシなのかもしれん。


さっそく僕は変身を試みる。全身に魔力を通すとか、異世界ラノベにありがちなやつだ。

僕ならきっと出来る。


むっ…。


むむっ…。


むむむっ…。


はむきち:女神様、変身できないのですけど…。


エリアル:本来獣人族は人形で生まれ育ち、スキルによって必要な時なのみ動物形態に変身します。

しかし今回の場合、元々動物だったのに魔法の力を借りて無理矢理種族進化を行ったという形です。

なので、変身には練習が必要です。

全身に魔力を通す練習を、とにかく続けてください。

自転車に乗るのと同じで、一度感覚を掴んでしまえば、後は簡単です。


はむきち:うげぇ


僕は思わず弱音を吐いた。



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