20歳の小学三年生の春休み

ルーシアは今年、小学三年生まで落第します。



新学期初日にオムツを替えられ、更にその最中にもオモラシしていたのです。

もちろんその後もこんな回数では済みませんでした。

初日の内に落第が内定していたのでした。


しかし、誰もが褒め称えるのです。

屈辱ではありましたが、危機感があまりにも感じづらかったのです。



むしろよく小学生で踏みとどまれたものでした。


ですがこれからはそうも行きません。



なぜなら、小学校にはルーシアの妹である、ソフィアが通っているからです。

入学は去年のはずなので、今2年生でしょうか。


ルーシアは卒業式の日の翌日から、一度も王城に帰ってはいません。

だから、ソフィアもルーシアのオムツのことは知らないはずなのです。


報道はありましたが、幼いので知らないでいることを心より願う他ありませんでした。




編入までの春休み期間。

ルーシアはこれ以上落第される訳にはいかないという理由で、王立オモラシ矯正センターに入れられてしまうのでした。


ルーシアは全力で嫌がります。

このような自体であれば、事前にこのような施設は調べてありました。



この施設に入ると、顔も名前も、個人情報の全てと、この施設の卒園者であると永遠に公表され続けます。


名前:ルーシア・アヴェーヌ

誕生日:○☓年1月26日

身長:172cm

体重:53kg

最終学歴:幼稚園

(オモラシ留年制度により、小学校までの卒業取り消し処分)

学力

国語:S

算数:S

理科:S

社会:S

音楽:S

体育:B


オモラシ頻度、586回(高等学校校舎内でのみ計測)



現在、ルーシアの名前しか出ていません。

というのも、留年に落第と同様、この施設の入園も、ルーシアが初めてでした。


小学校もこの施設から通う予定です。



ですが、今のところ治る気配はありません。

尿意が溜まる事を自覚するのが難しいルーシアには無理でした。



漏らせば流石に気づけます。

が、それは自らスタッフに頼まねば交換はしてくれません。

今まで時間になったら問答無用で、褒められながら替えてくれる環境とは違いました。


誰も褒めてなどくれません。



この施設では、

「おしっこしたいです」「おまるを貸してください」


と、言えて、オムツを外してそこにできて、はじめて卒園出来ます。




育児室のように見える独房。

中には監視カメラとベビーベッドがあるのみで、トイレはありません。


ルーシアは、何も出来ずお漏らししたオムツを翌朝替えられるのみでした。



そして、この施設の特徴として、昼の行事に”歩行訓練”があります。


トイレに行きたいと認識できても、トイレまで歩いていけなくては意味がないからです。


これに関しては学校が始まるまでの短い期間です。




今日も24時間スタッフがいるはずなのですが、呼べませんでした。


ネコさんのおむつカバーを当てられます。この施設では布おむつなのです。



今日は、王家の人間による、視察があるそうです。

初の入園者が現れたということで、それは王家の人間としては当然のことでしょう。

ルーシアが嫌がるかどうかなど、関係ありません。



視察に着たのは、なんと妹のソフィアでした。

ソフィアはなぜルーシアがオムツ姿なのか、このような施設にいるのかが理解できませんでした。



あの常に格好良く、美しかったソフィアの姉像は音を立てて崩れていきます。



ソフィアは今年、小学二年生……ではありません。

今年、小学三年生となるのでした。


飛び級制度です。



ルーシアが優秀だったように、ソフィアもまた優秀な頭脳を持っていたのです。

王がルーシアに施したのと同じように、あらゆる教育を湯水のように吸収しました。

その優秀さを認められ、飛び級の試験を受けさせてもらえたのです。


飛び級は、試験を受ける必要があります。

それに受かったのでした。



流石に王の関与を疑われますが、それは落第しているルーシアの存在が否定の証拠となっていました。


飛び級、落第ともに、この姉妹のみが適用されているのでした。



高校3年生から10学年も滑り落ちてきた姉のルーシアと

小学1年から一つ飛ばし3年になったソフィア。


20歳と7歳。

13歳の年の差がある姉妹は、同級生となってしまったのでした。




ソフィアが何故この施設に着たのか。

それは入園者の家族の定期面談があるからです。


法的にはまだ家族の保護下にあります。

家族には、入園者がどのような頻度でおもらししているのか、改善する意思があるか等を担当官より確認する事ができます。


実はこの施設、卒園の意思決定権は家族にあり、ルーシアの場合はソフィアが握ることになったのです。


もし、反抗的な態度をとるようならば、卒園は永遠に不可能でしょう。



面談時間の間、今のルーシアがオモラシに耐えられるわけもなく、ソフィアは卒園を見送らせることにしました。


姉妹ですが、違う所から学校に通うことが決まりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る